離職コストの計算方法完全ガイド – 年収の1.75倍説の根拠

更新:2026.07.31|公開:2026.07.13

離職コストの計算方法完全ガイド – 年収の1.75倍説の根拠

離職コストの計算方法完全ガイド|年収の1.75倍説の根拠

「社員1人が辞めると、結局いくらの損失になるのか」
——経営会議や人事部門の予算策定でこの問いに即答できる企業は、決して多くありません。

離職コストは目に見える採用費用だけでは測れず、教育投資・生産性ロス・機会損失といった複数の要素が複雑に絡み合っているためです。

本記事では、世界的に引用される「年収の1.75倍説」の根拠から、中小企業がそのまま使える試算テンプレート、計算例、そして見えにくい隠れコストまでを整理して解説します。

CIY®編集部が国内外の人事文献と公的統計を参照し、実際に離職対策を進めている企業の運用知見を反映してまとめました。

CIY®才能カルテ

この記事でわかること

  • 離職コストを構成する5つの要素と、その内訳の考え方
  • 「年収の1.75倍説」の根拠と、業種・職種別に異なる係数の使い分け
  • 中小企業がそのまま使える離職コスト試算テンプレート
  • 年収500万円の社員1名が離職した場合の具体的な計算例
  • 表面化しにくい「隠れたコスト」と、その削減アプローチ

図解_離職コストの計算方法完全ガイド – 年収の1.75倍説の根拠

目次

なぜ「離職コスト」を計算する必要があるのか

離職コストの計算は、人事施策を経営判断に翻訳する作業と言い換えられます。離職率の高さを「もったいない」「困った」と感覚で語っているうちは、リテンション施策に十分な予算が下りず、対症療法の繰り返しに陥りがちです。

厚生労働省「雇用動向調査」によると、令和5年の常用労働者の離職率は15.4%です。仮に従業員100名・平均年収450万円の企業が同水準で離職すると、年間15名が辞めることになります。離職1名あたりのコストを保守的に年収の1.0倍と置いても、それだけで年間約6,750万円の損失です。

この数字を経営会議に提示できれば、エンゲージメントサーベイ導入や1on1の制度化、適性検査の運用見直しといった施策が「コスト削減投資」として議論可能になります。離職コストの計算は、採用と定着を経営マターに引き上げる第一歩です。

離職予防戦略については、離職を未然に防ぐ完全ガイド|離職予兆の見つけ方・コスト削減・実務対応のすべてで体系的に整理しています。

離職コストの全体構造|5つのコスト要素

離職コストは、大きく次の5要素に分解できます。これは中小企業から大手まで共通して使える基本フレームです。

要素 内訳の例
①採用コスト 求人広告費、人材紹介手数料、面接官人件費、リファラル報奨金
②オンボーディング・教育コスト 新人研修、OJT担当者の時間、eラーニング、メンター制度
③生産性ロス 退職前の生産性低下、空席期間、後任の立ち上がり期の生産性ギャップ
④引継ぎ・周辺工数 マニュアル作成、引継ぎ会議、上司・同僚の代行業務
⑤機会損失・周辺影響 失注リスク、顧客対応遅延、残された社員の士気低下、連鎖離職

①〜④までは比較的見積もりやすい一方、⑤は推定値で扱わざるを得ません。それでも⑤を無視すると、実態より過小評価された数字を経営会議に出すことになります。後述する「隠れたコスト」のセクションで、現実的な係数の置き方を解説します。

「年収の1.75倍」説の根拠|代表的な試算と適用範囲

離職コストを語るときに頻出するのが「1人の離職で年収の1.5倍〜2倍が失われる」という見立てです。なかでも「1.75倍」は、米国の人事専門団体や経済研究機関が公表してきた試算の中央値として、国内外の人事白書・人事系書籍でも引用されてきました。

この数値はあくまで概算で、実際には職種・等級・業種によって大きくぶれます。一般的には次のような幅で使い分けられています。

職種・階層 年収比の目安
一般職・新卒1〜3年目 0.5〜1.0倍
中堅・専門職 1.0〜1.5倍
管理職・高度専門職 1.5〜2.0倍
経営層・キーパーソン 2.0倍以上

「1.75倍」を絶対値として鵜呑みにするのではなく、自社の組織階層に合わせて係数を調整するのが実務的です。中小企業であれば、平均値として1.0〜1.2倍を用い、管理職離職時のみ1.5〜2.0倍を適用するという二段構えで計算すると、現場感覚に近い数字になります。

離職コストの計算ステップ|中小企業向けテンプレート

実際の計算は、以下の5ステップで進めます。Excelで数行のシートに収まる構造です。

ステップ1:要素ごとに金額を埋める

①採用コスト=求人媒体費+人材紹介手数料(年収の30〜35%目安)+面接官人件費(時給換算×延べ時間)

ステップ2:教育・立ち上げコストを算出する

②教育コスト=研修費用+OJT担当者の時間×時給+本人が戦力化するまでの月数 ×「未到達分の生産性ギャップ」

ステップ3:生産性ロスを期間で見積もる

③生産性ロス=退職前3か月の生産性低下分(年収の25%程度)+空席期間の業務未遂行分+後任が独り立ちするまでの不足分

ステップ4:周辺工数を加算する

④周辺工数=引継ぎマニュアル作成時間+上司・同僚の代行時間×時給

ステップ5:機会損失を概算で乗せる

⑤機会損失=顧客離反・失注リスクの推定値+連鎖離職リスク(同じチームから追加で1名離職する確率×その人のコスト)

①〜④の小計に、⑤を加算したものが「1名あたりの離職コスト」です。これに年間離職人数を掛けると、年間総コストが算出できます。

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計算例|年収500万円の中堅社員1名が離職した場合

ここでは、入社5年目・年収500万円の中堅社員(営業職)が離職した場合のシミュレーションを示します。中小企業でよくあるケース設定です。

項目 金額 算出根拠
①採用コスト 175万円 人材紹介手数料(年収の35%)
②教育コスト 80万円 研修費+OJT担当者100時間×時給4,000円+立ち上げ期の不足分
③生産性ロス 200万円 退職前3か月の低下40万円+空席2か月80万円+立ち上げ期不足80万円
④周辺工数 50万円 引継ぎ・代行・マニュアル整備など
⑤機会損失 100万円 担当顧客の離反リスク・連鎖離職リスクの推定
合計 605万円 年収の約1.21倍

この例では、年収500万円に対して605万円、係数にすると約1.21倍となりました。営業職の場合は担当顧客の離反リスクが大きく、⑤の重みづけ次第で1.5倍以上にも膨らみます。係数を一律に「1.75倍」と置くのではなく、職種特性を踏まえた重みづけが重要であることがわかります。

隠れたコストと機会損失|表面化しにくい3つの損失

経営に説明する際、見落とされやすいのが次の3つの「隠れたコスト」です。

1. ナレッジ流出コスト

退職者が抱えていた顧客知識・業務ノウハウ・社内人脈は、引継ぎマニュアルでは完全に再現できません。中堅以上の離職では、ナレッジ流出だけで年収の20〜30%相当の損失が発生するという見積もりも珍しくありません。

2. 採用ブランドの毀損

短期間に複数名が辞めると、口コミサイトやSNSでネガティブな評判が拡散しやすくなります。次回の採用で応募数が減り、採用単価が上昇する形で間接的に跳ね返ってきます。

3. 連鎖離職リスク

ハーバード・ビジネス・スクールのチームワーク研究などでも示唆されてきたとおり、1人の離職は同じチームの他メンバーの離職意向を高めます。キーパーソンが辞めた後、半年以内に同じチームから2人目が出るケースは中小企業では珍しくなく、「連鎖係数」を見込んでおく必要があります。

これらをすべて細かく算定するのは現実的ではないため、①〜④の小計に対して1.2〜1.4倍を掛ける形で「隠れコスト係数」として加算するのが実務的です。

離職コストを削減する3つのアプローチ

計算した離職コストをどう削減するかは、採用・配置・予兆検知の3段階で考えると整理しやすくなります。

アプローチ1:採用段階のミスマッチを減らす

入社後の早期離職は、ほぼ採用時点のミスマッチに起因します。CIY®適性検査を採用合否判断に組み入れた場合、入社3年時点の離職率が一般平均39%に対して14.7%に削減されています(※当社調べ・2026年4月時点)。採用段階で離職コストを先回りして削減するアプローチです。

アプローチ2:配置と任せ方の最適化

入社後のコストは、配置のミスマッチで膨らみます。強み・弱みに合わせた配置と任せ方の調整は、エンゲージメント低下を未然に防ぐもっとも費用対効果の高い施策です。

アプローチ3:離職予兆の早期検知と介入

辞意が固まる前の段階で予兆を捉え、1on1や配置調整で介入できれば、離職そのものを防げます。

3段階アラートと介入レシピの考え方は、離職予兆の7つのサイン|マネージャーが見逃さないチェックリストでまとめています。

まとめ

離職コストは「①採用+②教育+③生産性ロス+④周辺工数+⑤機会損失」の5要素に分解し、職種・階層別の係数を当てはめて計算します。「年収の1.75倍」は便利な目安ですが、自社の組織構成に合わせて0.5〜2.0倍の幅で調整するのが実務的です。年収500万円の中堅社員1名で約600万円規模、隠れコストまで含めれば700〜800万円規模に達することも珍しくありません。

次のアクションとして、まずは直近1年間の離職者を1名ピックアップし、本記事のテンプレートで試算してみてください。実額が見えた瞬間に、リテンション投資の優先順位が変わります

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離職コストは1人あたり年収の1.0〜2.0倍。社員数100名・離職率15%の企業では年間数千万円規模の見えないコストが発生しています。CIY®才能カルテは、離職予兆を3段階アラートで検知し、介入レシピも自動提案。採用合否判断にCIY®適性検査を組み入れた企業では、入社3年時点の離職率が一般平均39%に対して14.7%に削減されています(※当社調べ・2026年4月時点)。

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執筆・監修者

人材の強みを活かした採用と配置
CIY®(シーアイワイ)

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独自の適性分析&マッチング技術で特許取得
(特許番号:7219981号)
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よくある質問

Q. 離職コストは中小企業でも計算する意味がありますか?
A. むしろ中小企業ほど計算する意味があります。1名の離職が組織全体に占める割合が大きく、係数を保守的に置いても経営インパクトが明確に見えやすいためです。30〜100名規模の企業では、年間の離職総コストが営業利益の10〜20%に達するケースも珍しくありません。
Q. 「年収の1.75倍」をそのまま使ってよいですか?
A. 一般職中心の組織ではやや過大に出る可能性があります。本記事のように職種・階層別に係数を分けるか、保守的に1.0〜1.2倍を基本値として使い、管理職離職時のみ1.5倍以上を適用するのが実務的です。
Q. 採用コストはどこまで含めるべきですか?
A. 求人媒体費・人材紹介手数料といった外部費用に加え、面接官の人件費(時給換算×延べ時間)、内定後フォローの工数まで含めるのが一般的です。リファラル採用の場合は社員紹介の報奨金も忘れずに加算します。
Q. 機会損失の金額はどう見積もればよいですか?
A. 営業職であれば「担当顧客の年間粗利×離反確率」、専門職であれば「担当プロジェクトの遅延による粗利減」を概算します。正確な金額化が難しい場合は、20〜40%を機会損失係数として加算する簡易計算でも経営判断には十分です。
Q. 離職コストを削減する一番効果的な方法は何ですか?
A. 採用時点でのミスマッチ抑制が、もっとも費用対効果の高い施策です。入社後のフォロー施策を100点満点で運用しても、採用ミスマッチによる早期離職は完全には防げないため、入口の精度を上げることが結果としてコスト削減に最大の効果をもたらします。