業界別離職率の平均と高低ランキング – 自社水準を測る4ステップ

「自社の離職率は、業界の中で高いのか低いのか」
――この問いに即答するには、業界平均というベンチマークが欠かせません。
厚生労働省「雇用動向調査」によれば、日本の常用労働者の年間離職率は約15.4%。しかし業界別では宿泊業・飲食サービス業の26%超から複合サービス事業の7%台まで、3倍以上の開きがあります。
本記事では最新の業界別離職率ランキング、自社水準を正しく評価する4ステップ、平均を上回る場合の打ち手までを、経営判断に直結する形で整理します。
この記事でわかること
- 日本全体・業界別・規模別の離職率の最新水準
- 業界別離職率ランキング(高い順/低い順)と差を生む3つの構造要因
- 自社の離職率を「正しく」評価する4ステップ
- 業界平均を上回っていた場合に着手すべき3軸の打ち手
- 採用・配属段階で離職リスクを先回りする視点
目次
日本の離職率の全体像|まず押さえる2つの基準値
業界別を語る前に、押さえておくべき全体水準が2つあります。
1つは常用労働者の年間離職率、もう1つは新規学卒者の3年以内離職率です。
厚生労働省「令和5年雇用動向調査」によれば、常用労働者の年間離職率は15.4%。
常用労働者数を母数とした、入社・退職を含む流動率です。
一方、新規学卒者の3年以内離職率は、大卒で34.9%、高卒で38.4%、中卒で52.9%。いわゆる「3年3割」の水準は、過去20年で大きくは変わっていません。
注意したいのは、これらが全産業の平均値であり、業界・規模・年次によって実際の水準は大きく異なることです。
「自社は離職が多い」と感じる前に、業界×規模で揃えたベンチマークと比較しなければ、過剰な危機感や逆に油断を生みかねません。離職率の構造的な改善方法は 離職を未然に防ぐ完全ガイド で体系的に整理しています。
業界別離職率ランキング|高い順・低い順で見る最新動向
令和5年の業界別離職率を、高い順/低い順で並べると次のようになります。全産業平均15.4%を基準に、業界による偏りが鮮明です。
離職率が高い業界(年間離職率の高い順)
| 順位 | 業界 | 年間離職率 |
|---|---|---|
| 1位 | 宿泊業・飲食サービス業 | 約26.6% |
| 2位 | 生活関連サービス業・娯楽業 | 約20.7% |
| 3位 | サービス業(他に分類されないもの) | 約18.5% |
| 4位 | 教育・学習支援業 | 約15.5% |
| 5位 | 医療・福祉 | 約14.6% |
離職率が低い業界(年間離職率の低い順)
| 順位 | 業界 | 年間離職率 |
|---|---|---|
| 1位 | 複合サービス事業(郵便局・農協など) | 約7.4% |
| 2位 | 金融業・保険業 | 約8.3% |
| 3位 | 製造業 | 約9.7% |
| 4位 | 建設業 | 約10.5% |
| 5位 | 情報通信業 | 約11.4% |
最大の宿泊・飲食と最小の複合サービスでは、同じ「離職率」でも3.6倍の開きがあります。
自社が宿泊・飲食であれば年間20%でも業界平均以下、製造業で年間20%なら平均の2倍超という具合に、業界を踏まえずに評価すると判断を誤ります。
業界差を生む3つの構造的要因
業界別離職率の差は、偶然ではなく構造的な要因に支えられています。大きく次の3つです。
①労働集約度と労働時間の長さ
宿泊・飲食、生活関連サービス、医療・福祉は対人サービスが中心で、労働集約度が高い業種です。
シフト勤務・夜勤・繁閑差が大きく、身体的な負荷が継続することで離職要因が累積しやすい構造があります。
②賃金水準とキャリアパスの可視性
金融・保険、情報通信、製造業など離職率が低い業界は、賃金水準が比較的高く、職位ごとの昇給ラインが明確です。
逆に離職率が高い業界では、若手のキャリアパスが個店・個人スキル依存になりがちで、「ここで5年働いた先の自分」が見えにくいことが共通します。
③採用入口の母集団とミスマッチ率
離職率が高い業界ほど、応募者数の確保を優先して採用要件を緩めざるを得ない状況が起きやすく、入社時点でのミスマッチが構造的に発生します。
逆に低い業界では、選考基準を維持できる応募母集団が確保され、入口段階のミスマッチを抑え込めています。
離職対策は採用要件の精緻化から始まると言われるのは、この構造的事実が背景にあります。
規模別ベンチマーク|中小企業ほど離職が高くなる理由
業界平均と並んで欠かせないのが、規模別の比較です。一般的に従業員規模が小さいほど離職率は高い傾向にあります。
- 5〜29人規模:年間離職率 約17〜19%
- 30〜99人規模:年間離職率 約15〜17%
- 100〜299人規模:年間離職率 約14%前後
- 1,000人以上規模:年間離職率 約12〜13%
差を生む主な要因は、採用力・育成体制・配属の選択肢の3点です。
中小企業ほど採用母集団が小さく、入口段階のミスマッチが起きやすい。配属先の選択肢が少ないため、合わなかった場合の社内異動で吸収しづらい。
育成は現場OJTが中心で、上司との相性に依存します。
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自社の離職率を正しく評価する4ステップ
業界平均と単純比較するだけでは「高い/低い」の感触しか掴めません。経営判断に使える評価には4ステップが有効です。
ステップ1:自社の年間離職率を計算する
計算式は「年間離職者数 ÷ 年初時点の常用労働者数 × 100」が標準。
雇用動向調査と揃える場合は、常用労働者を母数にする点を統一します。
ステップ2:業界×規模で揃えた平均と比較する
業界平均だけでなく、自社規模の帯(例:30〜99人規模)も合わせた水準と照合します。
業界×規模の二軸で揃えて初めて、適切な比較になります。
ステップ3:入社年次別に分解する
同じ離職率15%でも、新卒3年以内に集中している会社と、中堅10年層が抜けている会社では、打ち手がまったく異なります。
ステップ4:部署・上司別に分解する
全社平均は健全でも、特定部署・特定マネージャー配下に偏っているケースが珍しくありません。
部署別・上司別の離職率分布を可視化することで、本当に介入すべきポイントが特定できます。
業界平均を上回っていた場合の打ち手|入口・予兆・配属の3軸
自社の離職率が業界×規模の平均を上回っていた場合、すぐに打てる施策は「入口」「予兆」「配属」の3軸に整理できます。
①入口設計:採用合否判断の精度を上げる
離職率が高い会社の多くは、入社後の対応に偏重し、採用段階での合否判断が経験と勘に依存しています。
応募者の特性データを活用し、職務適性・組織適性の両面で構造的に判定する仕組みに切り替えると、入口段階のミスマッチが大きく減ります。
CIY®適性検査を採用合否判断に組み入れた企業群では、入社3年時点の離職率が一般平均39%に対して14.7%に改善されています(※当社調べ)。
②予兆検知:定量指標とパルスで早期に把握する
勤怠変動、1on1での発言量、エンゲージメントスコア、業務量の偏りといった指標を月次でモニタリングし、閾値を超えた段階で介入します。
「なんとなく元気がない」を、可視化された数値に置き換える運用が要です。
③配属・采配の最適化:強みベースの再配置
離職の根本要因の1つに「いまの仕事と、本人の強み・特性のずれ」があります。離職対策は配置の問題として捉え直すと、退職しか解にならない局面の前に、社内異動や役割の調整で食い止められる余地が広がります。
CIY®才能カルテによる強み診断とその活用は CIY®才能カルテ公式 をご覧ください。
まとめ
業界別離職率は「自社が高いのか低いのか」を判断する出発点です。日本全体の年間離職率15.4%、新卒3年離職率34.9%という基準値を踏まえ、業界×規模で揃えた平均と比較し、さらに入社年次・部署・上司別に分解することで、初めて経営判断に使える水準感が得られます。
業界平均を上回っていた場合の打ち手は、入口設計・予兆検知・配属最適化の3軸。
中でも採用段階での合否判断の精度を上げる「入口設計」は、最も投資対効果の高い領域です。次のアクションとして、自社の年間離職率と業界×規模平均を並べる1枚のサマリーシートをまず作成してみてください。
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