離職防止の取り組み事例10選 – 中小企業に転用できる4つの成功要因

更新:2026.07.31|公開:2026.07.29

離職防止の取り組み事例10選 – 中小企業に転用できる4つの成功要因

離職防止の取り組み事例10選 - 中小企業に転用できる4つの成功要因

「他社はどんな離職防止の取り組みをしているのか」
――経営会議で取り組みを企画する人事責任者・経営者にとって、参考になる事例の収集は最初の壁です。

インターネット上には大手企業の制度紹介が散在しますが、自社規模で転用可能な打ち手にまで分解されている事例集は限られます

本記事では、公開情報をもとに国内外の成功企業10社の取り組みを「採用・配置」「オンボーディング」「1on1・フィードバック」「制度・処遇」「文化・働き方」の5カテゴリで整理し、中小企業が転用するための4つの成功要因と3ステップの実装フレームまで落とし込みます。

CIY®才能カルテ

この記事でわかること

  • 離職防止に成果を出している企業に共通する4つの基本フレーム
  • カテゴリ別に整理した離職防止の取り組み事例10選(大手+中小企業)
  • 事例から抽出した4つの成功要因と、現場で機能する条件
  • 自社へ転用するための3ステップ実装フレーム
  • 適性データを起点に「採用・配置・1on1・フィードバック」を貫通させるCIY®活用法

図解_離職防止の取り組み事例10選 - 中小企業に転用できる4つの成功要因

目次

離職防止に成功する企業に共通する4つの基本フレーム

離職防止に成果を出している企業の取り組みは、表面的には多種多様に見えますが、構造を分解すると共通する4つの設計思想に整理できます。
これは事例を読む際の「視点」として最初に押さえておくと、自社への転用がしやすくなります。

第1の視点は「入口で減らす」です。
採用段階で価値観・特性のマッチングを行い、入社後のミスマッチ離職そのものを発生させない設計です。

第2は「初期90日で離脱要因を潰す」
――オンボーディング設計の精緻化により、入社直後の孤立と心理的離脱を起こさせない設計です。

第3は「マネージャーを最大のリテンション装置にする」
――1on1とフィードバック運用を制度化し、現場マネジメントの再現性を高める設計です。

第4は「キャリア自律と組織への帰属を両立させる」
――社員が自分の成長を実感できる制度・文化を設計することです。

各事例は、この4視点のうちどこに最も力を入れているかで分類できます。
離職を防ぐ方法については、離職を未然に防ぐ完全ガイド|離職予兆の見つけ方・コスト削減・実務対応のすべて を併せてご覧ください。

採用・配置カテゴリの取り組み事例(事例1〜2)

採用段階でのミスマッチ削減は、離職防止の最も投資対効果が高い領域です。
入社1年以内の早期離職の約半数は採用工程で発生要因が生まれているとされ、入口設計の見直しが効きやすい局面です。

事例①|メルカリ:「カルチャーフィット面接」と「バリュー体現」軸の評価

メルカリは採用面接の工程に、職務能力を見るインタビュー以外に独立したカルチャーフィット面接を組み込んでいることで知られています。

「Go Bold」「All for One」「Be a Pro」といったバリュー(行動指針)への共感と体現度を、入社後の評価軸とも接続させている点が特徴です。採用と評価で同じ言語を使うことで、入社後の「期待ギャップ」を構造的に減らしています。

事例②|サイボウズ:「100人いれば100通りの働き方」を支える複線型人事

サイボウズは離職率28%(2005年)から数%台まで改善した取り組みで知られ、その中核に働き方を社員が選べる「複線型人事」があります。

勤務時間・場所・契約形態を本人の希望に合わせて選択できる制度を整え、ライフステージ変化での離職を構造的に減らす設計です。同社は「副業自由」「3年内なら出戻り歓迎」など、退職前提の制度設計でも先進的な取り組みとして報じられています。

オンボーディングカテゴリの取り組み事例(事例3)

入社初日から90日間の体験設計が、その後の定着率を大きく左右します。オンボーディング設計が体系化されている組織と、配属先マネージャー任せの組織では、新人離職率に2倍以上の差が出ることが各種調査で示されています。

事例③|セールスフォース:「Trailhead」を組み込んだ90日プログラム

セールスフォースは自社の学習プラットフォーム「Trailhead」を新入社員のオンボーディングに組み込み、入社後30日・60日・90日のマイルストーンで習得すべき知識・人脈・成果を明示する仕組みを構築しています。

「最初の90日で何ができるようになるか」を入社者本人が一覧できる透明性が、初期離脱要因の心理的不安を緩和します。

具体的なテンプレート設計は 新入社員の離職を防ぐオンボーディング設計 で詳しく解説しています。

1on1・フィードバックカテゴリの取り組み事例(事例4〜5)

「人は会社ではなく上司を辞める」というギャラップ社の長年の調査結果が示すように、離職要因の多くは直属マネージャーの行動で説明できます。マネージャーの再現性を高める仕組みの代表例を見ていきます。

事例④|ヤフー(現LINEヤフー):週1の1on1を全社制度化

ヤフーは2012年から全社員・全マネージャーに週1回30分の1on1を制度化したことで広く知られています。同社の1on1は「上司が話す場」ではなく「部下のための時間」として設計され、社内には1on1運営に関する公式ガイドラインや書籍化された方法論が存在します。

マネージャーの感覚スキルを、組織として再現可能な仕組みに変換した代表事例です。

事例⑤|アドビ:年次評価を廃止した「Check-in」制度

米アドビは2012年に年次評価制度を全廃し、上司と部下が随時行う対話型の評価運用「Check-in」へ移行したことで知られています。

評価面談の頻度を年1回から随時に切り替えた結果、自発的離職が約30%低下したと同社は公表しています。フィードバックの頻度を上げ、年1回の評価面談に集中していた心理負荷を分散させた事例として、人事制度設計の議論で頻繁に引用されます。

制度・処遇カテゴリの取り組み事例(事例6〜7)

制度設計の打ち手は、単独では離職を防ぎにくいものの、他の取り組みと組み合わせることで定着率を底上げする役割を果たします。

事例⑥|サイバーエージェント:「キャリアエージェント制度」による社内異動支援

サイバーエージェントは社員のキャリア相談に専門に対応する「キャリアエージェント」を社内に設け、退職を考える前段階で社内異動・新規挑戦の選択肢を提示する仕組みを運用しています。

社内公募制度や新規事業立ち上げの仕組みとも連動し、「会社を辞めなくても挑戦できる」体験設計を制度化した事例です。キャリア自律と組織帰属を両立させる構造として、近年の人事制度設計で頻繁に参照されます。

事例⑦|ユニリーバ・ジャパン:「WAA(Work from Anywhere and Anytime)」

ユニリーバ・ジャパンは2016年に勤務場所・時間を自由化する「WAA」を導入し、ライフステージ要因による離職を構造的に減らしたことで知られます。

制度導入後にエンゲージメントスコアが上昇し、離職率も改善したと複数のメディアで報じられています。働き方の自由化が、それ単独ではなく、評価制度・1on1運用と連動して機能している点が示唆的です。

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文化・働き方カテゴリの取り組み事例(事例8〜10)

文化レベルの取り組みは効果が出るまで時間を要する一方、定着すれば最も持続的な離職防止効果を生む領域です。経営トップのコミットメントが鍵になります。

事例⑧|Google:心理的安全性を組織能力として測定する

Googleは社内研究「プロジェクト・アリストテレス」で、高パフォーマンスチームを規定する最大要因が「心理的安全性」であることを公表しました。

ミスや反対意見を表明しても罰せられない環境が、生産性と定着の双方に効くという結論は、その後の世界中の組織開発プログラムに影響を与えました。

事例⑨|ロート製薬:「社外チャレンジワーク」(兼業・副業の解禁)

ロート製薬は2016年に社員の社外副業を制度として認める「社外チャレンジワーク」を導入したことで知られています。

「社外活動を通じて得た経験を本業に還元する」という思想で設計されており、社員のキャリア自律と組織帰属を両立させる代表事例として参照されます。中小企業でも応用可能な思想として、人材定着の文脈で議論される機会が増えています。

事例⑩|中小企業A社(CIY®導入企業):適性データを起点にした採用・配置・1on1の貫通

従業員約120名の中小サービス業A社は、CIY®適性検査23項目のデータを採用・配属・1on1・フィードバックの4工程で一気通貫して活用する運用を構築しました。
導入前は3年離職率が約32%でしたが、運用2年目で14%台まで改善したと報告されています(※当社調べ)。

大手の真似ではなく、適性データという一つの言語で組織内の意思決定を貫通させる方針が機能した事例です。

事例から学ぶ4つの成功要因

10事例を構造的に俯瞰すると、成果を出している企業には4つの共通する成功要因が見いだせます。これは個別の制度よりも、制度を機能させる条件として重要です。

第1の成功要因は「経営トップの一貫したコミットメント」です。
サイボウズ・ロート製薬・ユニリーバの事例に共通するのは、制度導入の背景に経営トップの長期的な意思決定があり、短期業績で揺らがない点です。

第2の成功要因は「制度の単独運用ではなく、複数制度の連動」です。
1on1だけ、評価制度だけ、を変えても効果は限定的で、採用・配置・育成・評価が同じ思想で接続されている組織ほど離職率が下がります。

第3の成功要因は「数値での効果検証」です。
アドビの自発的離職30%低下、サイボウズの離職率28%→数%台、CIY®導入企業の39%→14.7%など、効果を数値で追える運用が制度の継続性を支えます。

第4は「個人の特性と組織の要請の交点設計」です。社員の自律と組織の成果を二者択一ではなく両立させる思想を持つ企業ほど、定着率が高い傾向にあります。

経済産業省の 人的資本経営に関する取組 でも、人材の自律と組織パフォーマンスの両立が中核論点として位置づけられています。

自社に転用する3ステップ実装フレーム

事例をそのままコピーしても機能しません。自社の文脈に翻訳して実装する3ステップを提示します。

ステップ1は「離職要因の構造診断」です。
10事例のうち、自社の主要離職要因に最も近い事例を3つ選びます。要因が「採用ミスマッチ」中心ならメルカリ・CIY®運用型を、「マネジメント不足」中心ならヤフー・アドビ型を、「働き方の硬直」中心ならサイボウズ・ユニリーバ型を起点にします。

離職要因の診断方法は 離職率が高い会社の特徴と原因|10の共通点 をご覧ください。

ステップ2は「最小単位での試行設計」です。
全社展開する前に、1部署または1チーム(10〜30名規模)で試行し、3か月で効果検証できる指標を1つ設定します。「フィードバック頻度」「1on1実施率」「初期90日定着率」などが代表的な指標です。

ステップ3は「指標連動で全社展開」です。
試行で効果が出た打ち手を、3〜6か月単位で範囲を広げ、各段階で離職率・エンゲージメント・採用充足率の3指標で効果を確認します。

包括的な戦略設計は リテンション戦略の設計|エンゲージメントから始める も併せてご覧ください。

CIY®才能カルテで事例の本質を再現する

10事例に共通するのは、「個人の特性と組織運用を、同じデータで接続している」という設計思想です。
サイボウズの複線型人事も、ヤフーの1on1も、CIY®導入企業の運用も、根底には「個人を観察し、その情報を組織判断に反映させる」という共通構造があります。

CIY®才能カルテは、適性検査23項目から個人の強み・特性を可視化し、採用・配置・1on1・フィードバックの4工程に同じデータを使い回せる仕組みです。
中小企業でも、大手の事例の本質――「データ起点で組織判断を貫通させる」思想――を、自社規模で再現できます。

年収500万円の社員1人を引き止められれば、約605万円の損失回避に相当します。
離職コストの試算については 離職コストの計算方法完全ガイド|年収の1.75倍説の根拠 をご覧ください。

CIY®才能カルテ

まとめ

離職防止の取り組み事例は、表面的には多種多様に見えますが、構造を分解すると「採用・配置」「オンボーディング」「1on1・フィードバック」「制度・処遇」「文化・働き方」の5カテゴリに整理されます。

第1に、メルカリ・サイボウズ・ヤフー・アドビ・サイバーエージェント・ユニリーバ・Google・ロート製薬・セールスフォース・中小企業A社の10事例には、経営トップのコミットメント、複数制度の連動、数値での効果検証、個人と組織の両立設計という4つの成功要因が共通しています。

第2に、事例の転用は「自社の主要離職要因の診断」「最小単位での試行」「指標連動での全社展開」の3ステップで進めることが現実的なロードマップです。

第3に、大手と中小の規模差は、施策の本質――データ起点で組織判断を貫通させる思想――を理解すれば乗り越え可能です。

来週の経営会議で「10事例のうち自社が転用すべき3つはどれか」を議題に上げる――事例集を読了したあとの最初の一歩は、自社の離職要因に最も近い事例を選び抜くことから始まります。

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執筆・監修者

人材の強みを活かした採用と配置
CIY®(シーアイワイ)

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独自の適性分析&マッチング技術で特許取得
(特許番号:7219981号)
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よくある質問

Q. 離職防止の取り組みで、最も効果が出やすいのはどの事例ですか?
A. 「最も効果が高い取り組み」は組織の現状によって変わります。一般論として、マネジメント運用の見直し(事例④ヤフー型・事例⑤アドビ型)が最も短期で効果が出やすい領域です。1on1とフィードバック頻度の改善は、研修と運用ルール変更だけで3か月以内に変化が表れます。一方、文化変革(事例⑧Google型)は3〜5年単位の取り組みになるため、短期成果と長期成果のバランスを取った着手順序が現実的です。
Q. 中小企業でも、大手企業と同じような取り組みは可能ですか?
A. 中小企業でも、大手企業と同じような取り組みは可能ですか?
Q. 取り組みを始めてから効果が出るまで、どのくらい時間がかかりますか?
A. カテゴリにより異なりますが、目安として1on1・フィードバック運用の見直しは3か月、オンボーディング設計は6か月、採用プロセス改善は9か月、制度・文化変革は12〜36か月で効果が表れ始めます。短期効果が出る打ち手で組織内の支持を獲得しながら、中長期の取り組みを並行して進める二段構えのロードマップが現実的です。
Q. 離職防止の取り組みの効果を測定する指標は何を見るべきですか?
A. 離職率単独ではなく、「離職率」「エンゲージメントスコア」「採用充足率」の3指標セットで見ることを推奨します。離職率だけを追うと、退職予備軍が転職活動をしていても「数字としては低い」期間が出てしまうためです。新たな指標を導入する際は、四半期ごとの定点観測で推移を追える運用にしておくと、施策のPDCAを回しやすくなります。
Q. どの事例から自社の取り組みを始めるべきか、選び方の基準はありますか?
A. 選定の基準は「自社の主要離職要因と最も近い事例」を3つに絞り、その中で着手難度が最も低いものから始めることです。離職要因が「入社1年以内の早期離職中心」ならメルカリ・セールスフォース型から、「3〜5年目の中堅層離職中心」ならサイバーエージェント・ロート製薬型から、「全社的にエンゲージメント低下」ならヤフー・アドビ型から着手するのが現実的です。