マネージャー育成のための1on1|上司の上司が見るべき5指標

更新:2026.11.06|公開:2026.11.06

マネージャー育成のための1on1|上司の上司が見るべき5指標

マネージャー育成のための1on1|上司の上司が見るべき5指標

「マネージャーを任せたものの、部下育成がうまくいっていない」
「課長クラスの1on1が、報告会で終わっている気がする」
——プレイヤーとして成果を出してきた人でも、マネージャーとして新たに身につけるべき役割や行動があります。

本記事では、部長や事業責任者など「上司の上司」の視点から、マネージャー本人を支援する1on1の進め方と、部下との1on1が機能しているかを確認する5つの指標を実務目線で整理します。

現場任せになりがちなマネージャー育成を、査定や粗探しではなく、継続的な観察と支援の仕組みに変えるための考え方を紹介します。

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この記事でわかること

  • マネージャー育成に1on1をどう活用するか
  • 「上司の上司」が確認したい、1on1の質を見る5つの指標
  • マネージャーを育てる1on1の4つの問い
  • スキップレベル1on1の使い方と情報共有の注意点
  • マネージャー育成1on1で避けたい4つのNG
  • 部下の特性データを育成の補助材料として使う方法

図解_マネージャー育成のための1on1|上司の上司が見るべき5指標

目次

なぜマネージャー育成に1on1を活用するのか|現場任せの限界

マネージャーの育成は、「任せながら覚えてもらう」だけでは本人の経験則に依存しやすくなります。

プレイヤーとして成果を出す力と、マネージャーとしてメンバーを支援し、チームで成果を出すための力には重なる部分もありますが、求められる役割や判断には異なる点があります。

たとえばマネージャーには、

  • メンバーごとの状況を把握する
  • 仕事を任せ、必要な支援を行う
  • フィードバックを行う
  • チーム内の課題を整理する
  • 自分だけで抱えず、上位者へ相談する

といった行動が求められます。

研修で基本を学ぶことは有効ですが、実際のマネジメントでは日々さまざまな判断が発生します。
そこで、上司の上司との1on1を、実際に起きた出来事や判断を振り返り、次の関わり方を考える場として活用できます。

厚生労働省の能力開発基本調査でも、企業内の人材育成においてOJTが位置づけられています。

ただし、この調査が「1on1を実施すればマネジメント力が高まる」と直接示しているわけではありません。
1on1は、日常業務で得た経験を振り返り、必要な支援や次の行動を整理する一つの機会として位置づけます。

マネージャー育成の1on1には、大きく2つの側面があります。

  • マネージャー本人への支援:悩み、判断、役割、成長課題を一緒に整理する
  • 部下への関わり方の振り返り:メンバーへの任せ方、対話、フィードバック、支援方法を振り返る

「マネージャーを評価するための監視」ではなく、本人がより良い判断をできるよう支援することを基本にします。

1on1そのものの基本は、1on1のやり方完全ガイド|目的・進め方・頻度・準備を実践解説で体系的に整理しています。

「上司の上司」が見るべきマネージャーの1on1の質を確認する5つの指標

マネージャーが部下と行う1on1の状態を確認するとき、実施回数だけで判断するのは不十分です。

一方で、1on1の会話内容を上司の上司がすべて確認する運用も、率直な対話やプライバシーを損なうおそれがあります。

そこで、個別の相談内容そのものではなく、運用と対話の状態を示す複数の指標を組み合わせて確認することが重要です。

ここでは、支援が必要なポイントを見つけるための5つの指標を紹介します。

指標1:1on1の実施率と継続性

まず確認したいのは、計画した1on1が継続して実施されているかです。

ただし、実施率100%そのものを目的にする必要はありません。

やむを得ず延期した場合に、

  • 再設定されているか
  • 繁忙期だけ長期間止まっていないか
  • 本人の状況に応じて頻度を調整できているか

などを確認します。

実施率は「質」の証明ではなく、対話の機会が継続して確保されているかを見る入口の指標です。

指標2:部下が自分の考えを話せる余地があるか

1on1では、上司から必要な説明やフィードバックを行うこともあります。

そのため、「部下が何%話したか」という固定比率で良し悪しを判断する必要はありません。

見るべきなのは、

  • 上司の指示・説明だけで終わっていないか
  • 部下が困りごとや考えを話せる時間があるか
  • 部下の話を途中で決めつけず確認できているか

です。

確認する際は、1on1へ常に同席して監視するのではなく、マネージャー本人の振り返りや、必要に応じた部下側のサーベイなども組み合わせます。

指標3:合意したことがフォローされているか

1on1で出た話題が、必要に応じて次の行動へつながっているかを確認します。

たとえば、

  • 上司が確認すると約束したことを返答している
  • 業務量や役割について検討した結果を本人へ返している
  • 次回の1on1で前回の合意事項を振り返っている

といった状態です。

すべての1on1で必ずアクションを作る必要はありませんが、約束したことや合意したことが放置されていないかは、運用品質を見る手がかりになります。

指標4:マネージャー自身が課題と支援方針を言語化できているか

上司の上司との1on1では、マネージャーがチーム運営について何を見て、どう考えているかを確認します。

たとえば、

  • チームで今気になっていることは何か
  • どんな関わりを試しているか
  • うまくいっていること・難しいことは何か
  • 上位者からどんな支援が必要か

を説明できるかを見ます。

ここで、部下の私的な相談内容まで報告させる必要はありません。
個別の秘密を収集するのではなく、マネージャー自身の判断・対応・支援ニーズを振り返ることが目的です。

指標5:部下から見た1on1の有用性

マネージャー本人の自己評価だけでなく、部下側が1on1をどう感じているかも重要な材料です。

匿名性を確保できる場合は、たとえば、

  • 上司に仕事上の困りごとを相談しやすい
  • 1on1で自分の考えを話せる
  • 話した内容に対して必要な支援や返答がある

などを、同じ設問で継続的に確認する方法があります。

少人数チームでは回答者を推測できる場合があるため、個人が特定されない集計方法にも配慮します。

部下からのフィードバックは重要な視点の一つですが、それだけでマネージャーの良し悪しを決めないことが大切です。

なお、エンゲージメントスコア、欠勤・遅刻、離職などのチーム状態も補助的に確認できます。
ただし、これらには業務量、配置、処遇、組織変更など複数の要因が関係するため、「1on1の質が原因」と直接結びつけないようにします。

1on1全体の効果測定については、1on1の効果測定方法|KPIと定量・定性データの取り方で詳しく解説しています。

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マネージャーを育てる1on1の進め方|進捗確認・査定だけにしない4つの問い

上司の上司がマネージャーと行う1on1は、数字や進捗の確認だけで終わりやすい場でもあります。

業務上必要な進捗確認やフィードバックを行うこと自体は問題ありません。

ただし、育成を目的とする時間では、マネージャー自身の判断、悩み、試していること、必要な支援を言語化できる問いも入れます。

問い1:「いま、チーム運営で一番気になっていることは何ですか?」

最初から「問題のあるメンバーは誰か」と人を特定するのではなく、チーム運営上の状況から確認します。

必要に応じて特定のメンバーの話へ進みますが、本人の性格を決めつけるのではなく、観察できる事実と現在の対応を整理します。

問い2:「その状況に対して、どんな関わりをしていますか?」

マネージャー自身が現在の打ち手を説明することで、

  • 何を意図しているのか
  • 何を試したのか
  • どこで困っているのか

が見えやすくなります。

上司の上司は、すぐ正解を示すのではなく、まず本人の判断理由を確認します。
そのうえで、必要な情報や助言があれば伝えます。

問い3:「マネージャーとして、いま一番難しいと感じていることは何ですか?」

マネージャー自身の困りごとを確認します。

ここでは、1on1で相談した悩みや迷いを、そのまま正式な人事評価の判断材料として扱わないなど、1on1と正式な査定・評価判定との関係をあらかじめ明確にしておくことが重要です。

必要に応じて上司の上司が自身の経験を短く共有すると話しやすくなる場合もありますが、自己開示は必須ではありません。

1on1と評価面談の関係は、1on1と評価面談はどう違う?目的・頻度・評価との関係を整理も参考にしてください。

問い4:「私にどんな支援ができますか?」

上司の上司が、

  • 意思決定を手伝う
  • 関係部署との調整を行う
  • 業務量や役割を見直す
  • 別の視点や情報を提供する

など、どのような支援ができるかを確認します。

すべての要望を実現する必要はありません。
対応できること・できないことを整理し、約束したことは次回までに返答します。

具体的な質問のバリエーションは、1on1質問テンプレート50選|部下のタイプ別すぐ使える型も活用してください。

スキップレベル1on1の活用|現場の別の視点を直接確認する

マネージャー育成と並行して、必要に応じてスキップレベル1on1を活用する方法があります。

スキップレベル1on1とは、上司の上司が一階層飛ばして、現場のメンバーと直接対話する取り組みです。

マネージャーを通じて得る情報とは別に、現場メンバー本人がどう認識しているかを直接確認できることが利点です。

ただし、本人から直接聞いた情報も、その人の視点から見た情報です。
スキップレベル1on1で聞いた内容を「客観的な真実」として扱い、マネージャーを評価・追及する材料にしないよう注意します。

運用前に、少なくとも次を明確にします。

  • 何のために実施するのか
  • 誰が参加するのか
  • 話した内容をどの範囲で共有するのか
  • 記録する場合は何を残すのか
  • 安全・ハラスメント・法令違反など、共有が必要になる例外をどう扱うか

マネージャー側にも、目的が「粗探し」ではなく、現場理解と組織改善、マネージャーへの支援にあることを伝えます。

また、メンバーの私的な相談やセンシティブな内容を、本人の想定を超えてそのままマネージャーへ戻さないようにします。
通常の改善事項は、必要に応じて個人を特定しない形で整理する方法もあります。

頻度に全社共通の正解はありません。
四半期に1回程度を開始例にすることもできますが、組織規模、課題、既存のサーベイや面談との重複を見ながら調整します。

中堅メンバーとの対話については、中堅社員との1on1|停滞期を打破する質問15選と進め方も参考にしてください。

マネージャー育成1on1のNG・失敗パターン4つ

良かれと思った関わりが、マネージャー本人の相談や振り返りをしにくくする場合があります。

NG1:進捗確認だけで終わる

数字の報告と指示だけで終わると、マネジメント上の判断や困りごとを振り返る時間がなくなります。

進捗確認が必要な場合でも、それとは別に、

  • 最近迷った判断
  • うまくいった関わり
  • 支援が必要なこと

を確認します。

NG2:やり方を細かく否定し、正解を押し付ける

上司の上司が自分の成功体験だけを正解として細かく指示すると、マネージャー自身が判断理由を考える機会が減ります。

まず本人の考えを聞き、必要に応じて、

  • 別の選択肢
  • 考慮すべきリスク
  • 上位者として持っている情報

を返します。

「答えを一切与えない」のではなく、本人の判断を尊重しながら必要な助言を行うことがポイントです。

NG3:スキップレベル1on1の発言を使って本人を責める

「部下がこう言っていた」と発言者や内容をそのまま示してマネージャーを責めると、メンバー側もマネージャー側も話しにくくなる可能性があります。

改善が必要な場合は、

  • 複数の情報を確認する
  • 観察できる事実と課題を分ける
  • 改善したい状態を共有する

など、犯人探しにならない進め方を取ります。

NG4:5つの指標をそのまま人事評価の点数にする

本記事の5指標は、マネージャーを順位づけするための採点表ではありません。

実施率やサーベイ値だけを評価点へ直結させると、「回数をこなす」「良い回答を得る」といった数字そのものが目的になる可能性があります。

5指標は、どこに支援や改善が必要かを考えるための観察材料として使うことを基本にします。

1on1の失敗パターン全般は、1on1の失敗例10選|準備・対話・フォロー別NG行動と直し方も参考にしてください。

部下の特性データをマネージャー育成の補助材料にする

マネージャー育成では、「部下一人ひとりにどう関わるか」を毎回ゼロから考える負担があります。

また、上司の上司がマネージャーへ助言する際にも、経験則だけでは説明しにくいことがあります。

CIY®才能カルテでは、社員の特性をもとに、

  • 上司向けサマリー
  • 1on1での質問候補
  • 仕事の任せ方
  • コミュニケーションのヒント

などを確認できます。

ただし、特性データだけで「この部下にはこの対応が正解」と決めるものではありません。

本人の実際の反応、希望、業務状況とあわせて、関わり方を考えるための仮説材料として使います。

上司の上司にとっても、マネージャーと「このメンバーにはどんな任せ方を試すか」「どんな問い方がよさそうか」を話し合う補助材料にできます。

まとめ

マネージャー育成のための1on1には、本人を支援する対話と、部下への関わり方を振り返る対話の2つの側面があります。

上司の上司が確認したいのは、

  • 1on1の実施率と継続性
  • 部下が自分の考えを話せる余地
  • 合意したことのフォロー
  • マネージャー自身による課題・支援方針の言語化
  • 部下から見た1on1の有用性

という5つです。

これらはマネージャーを採点する指標ではなく、どこに支援が必要かを把握するための観察材料として使います。

また、スキップレベル1on1を行う場合は、現場の別の視点を得る機会として活用しつつ、目的・共有範囲・記録ルールを明確にしておくことが重要です。

まずは次回のマネージャーとの1on1で、「いま、チーム運営で一番気になっていることは何ですか」「私にどんな支援ができますか」の2つから確認してみてください。

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執筆・監修者

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よくある質問

Q. マネージャー育成に1on1はどう活用できますか?
A. 上司の上司との1on1を、マネージャーが日々の判断や部下への関わり方を振り返り、次に試すことや必要な支援を整理する場として活用できます。1on1を実施するだけでマネジメント力が高まると決まっているわけではありません。研修やOJTなどと組み合わせ、実際の経験を振り返る継続的な機会として位置づけます。
Q. 上司の上司は、マネージャーの1on1の質をどう確認すればよいですか?
A. 「実施率と継続性」「部下が自分の考えを話せる余地」「合意したことのフォロー」「マネージャー自身が課題と支援方針を言語化できているか」「部下から見た1on1の有用性」の5つを組み合わせて確認します。個別の相談内容をすべて把握するのではなく、運用と対話の状態から支援が必要なポイントを見つけます。
Q. スキップレベル1on1とは何ですか?注意点はありますか?
A. 上司の上司が一階層飛ばして現場メンバーと直接対話する取り組みです。マネージャー経由とは別に、現場メンバー本人の視点を直接確認できます。ただし、本人から聞いた内容も一つの視点であり、客観的な真実としてマネージャーを追及する材料にはしません。目的、共有範囲、記録方法、安全・ハラスメントなど共有が必要になる例外を事前に整理しておくことが重要です。
Q. スキップレベル1on1はどのくらいの頻度で行えばよいですか?
A. 全社共通の最適頻度はありません。四半期に1回程度を開始例にする方法もありますが、組織規模、課題、既存のサーベイや通常の1on1との重複を見ながら調整します。回数を増やすことより、目的と情報の扱い方を明確にして継続できる運用にすることが重要です。
Q. マネージャーを育てる1on1で避けたいNGは何ですか?
A. 進捗確認だけで終わること、やり方を細かく否定して正解を押し付けること、スキップレベル1on1で得た発言を使って本人を責めること、5つの指標をそのまま人事評価の点数にすることの4つです。上司の上司は、まず本人の判断や意図を確認し、必要な情報・助言・支援を返します。
Q. 5つの指標はマネージャーの人事評価に使ってもよいですか?
A. 5指標をそのまま評価点に置き換えることはおすすめしません。本記事の指標は、1on1運用のどこに支援や改善が必要かを考えるための観察材料です。正式な人事評価では、会社が定めた役割・目標・業務上の事実などを別途確認します。1on1で本人が相談した悩みや迷いを、そのまま正式評価へ転用しない運用も明確にしておきます。
Q. 新任マネージャーの育成は何から始めればよいですか?
A. まず、5つの指標のうちどこに支援が必要かを一つ確認します。そのうえで、「最近迷った判断は何か」「どんな関わりを試しているか」「上位者からどんな支援が必要か」を1on1で振り返ります。特性データを使う場合も、部下への対応を決める答えではなく、質問や任せ方を考える仮説材料として活用してください。