心理的安全性と離職の関係 – なぜ低い職場は人が辞めるのか

更新:2026.08.24|公開:2026.08.19

心理的安全性と離職の関係 – なぜ低い職場は人が辞めるのか

心理的安全性と離職の関係 - なぜ低い職場は人が辞めるのか
「最近、優秀な社員が立て続けに辞めてしまう」
「面談では問題ないと言っていた部下が、突然退職を切り出した」
——こうした離職の多くに共通するのが、心理的安全性の不足です。

本記事では、Googleの研究プロジェクト「Re:Work(プロジェクト・アリストテレス)」の知見をもとに、心理的安全性と離職率がどう結びつくのかを因果から解き明かし、マネージャーが明日から実践できる定着のための具体策までを整理します。

CIY®才能カルテ

この記事でわかること

  • 心理的安全性とは何か|Googleの研究が示した定義
  • 心理的安全性が低いと、なぜ人が辞めていくのかの因果メカニズム
  • 「プロジェクト・アリストテレス」が明らかにした離職率との関係
  • 自社の心理的安全性を測る7つの質問と「4つの不安」
  • 心理的安全性を高めて離職を防ぐ、マネージャーの実務ステップ
  • 一人ひとりの不安に合わせて関わりを設計する考え方

図解_心理的安全性と離職の関係 - なぜ低い職場は人が辞めるのか

心理的安全性とは|Googleの研究が広めた定義

心理的安全性(Psychological Safety)とは、組織行動学者エイミー・C・エドモンドソンが提唱した概念で、「このチームでは、対人関係上のリスクを取っても安全だと信じられる状態」を指します。

平たく言えば、質問しても、ミスを認めても、異論を唱えても、それを理由に罰せられたり評価を下げられたりしないと、メンバーが安心して感じられる状態です。

注意したいのは、心理的安全性は「ぬるい職場」や「仲良しクラブ」とは違うという点です。
むしろ逆で、率直に意見をぶつけ合えるからこそ、高い基準で成果を追える状態を指します。

言いたいことを我慢して表面的に穏やかな職場は、心理的安全性が高いのではなく、単に問題が見えなくなっているだけのことが少なくありません。

この概念が世界的に注目されたのは、Googleが自社の研究で「チームの成果を最も左右する要因」として心理的安全性を挙げたためです。

離職を構造的に捉える全体像は 離職を未然に防ぐ完全ガイド|離職予兆の見つけ方・コスト削減・実務対応のすべて に体系化しているので、本記事と併せてご覧ください。

心理的安全性と離職率の関係|なぜ低いと人は辞めるのか

心理的安全性が低い職場で離職が起きるのは、偶然ではありません。
そこには明確な因果の連鎖があります。

第一に、安心して発言できない環境では、困りごとや不満が表に出ないまま水面下で蓄積していきます。

「こんなことを聞いたら無能だと思われる」「異論を言えば波風が立つ」と感じる社員は、問題を抱えても口を閉ざします。
上司から見れば「特に問題なさそう」に見えるため、退職の予兆を察知できないまま、ある日突然の退職届に至ります。

第二に、意見が言えない状態が続くと、社員は「自分はこの組織に貢献できていない」「ここにいる意味がない」という無力感を抱きます。
エンゲージメントは静かに下がり、やがて他社への関心へと向かいます。

心理的安全性の欠如は、離職という結果に表れる前に、多くの場合エンゲージメント低下という形で兆候が現れるのです。

こうしたサインの拾い方は 離職予兆の7つのサイン|マネージャーが見逃さないチェックリスト で具体的に解説しています。

第三に、率直なフィードバックが交わせない関係では、成長実感も得られません。
厚生労働省「雇用動向調査」でも、人間関係や処遇への不満は離職理由の上位に挙がり続けています。
心理的安全性は、これら「関係と意味」の問題に直接効く土台だと言えます。

「プロジェクト・アリストテレス」が示した離職率との関係

Googleは2012年から約4年をかけ、自社の生産性を高めるチームの条件を解明する大規模調査「プロジェクト・アリストテレス」を実施しました。
エンジニアリングと営業の計180チームを対象に分析した結果、チームの成果を最も大きく左右する要因が「心理的安全性」だったと結論づけています。

この研究で特筆すべきは、心理的安全性と離職の関係です。
Googleの発表によれば、心理的安全性の高いチームのメンバーは、離職率が低いことが報告されています。

加えて、多様なアイデアを活かせる、収益性が高い、マネージャーから「効果的に働く」と評価される機会が多い、といった傾向も示されました。

つまり心理的安全性は、社員が辞めにくくなると同時に、チームの成果そのものも押し上げる——定着と生産性を両立させる希少な要因だということです。

Googleはこの成果を「Re:Work」として公開し、世界中の組織づくりに影響を与えました。

離職を防ぎながら成果を出す仕組みづくりは リテンション戦略の設計|エンゲージメントから始める も参考になります。

自社の心理的安全性を測る|7つの質問と「4つの不安」

「自社の心理的安全性は高いのか低いのか」を感覚で判断するのは危険です。
エドモンドソンは、心理的安全性を測る7つの質問を提示しています。

具体的には、「ミスをすると非難されるか」「課題や難しい問題を指摘し合えるか」「異質さを理由に他者を拒絶していないか」「リスクのある行動をしても安全か」「助けを求めやすいか」「意図的に足を引っ張る人がいないか」「自分のスキルや才能が尊重され活かされていると感じるか」の7項目です。

これらを5段階で社員に問い、スコア化することで、主観に頼らず職場の状態を可視化できます。

あわせて理解しておきたいのが、心理的安全性を下げる「4つの不安」です。

無知だと思われる不安・無能だと思われる不安・邪魔だと思われる不安・ネガティブだと思われる不安
——この4つが、社員が発言や質問をためらう根っこにあります。どの不安が強く出ているかは人によって異なり、ここを見極めることが対策の出発点になります。

定点観測の手法は パルスサーベイの設計と運用|質問項目と頻度 も併せて確認しておくとよいでしょう。

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心理的安全性を高めて離職を防ぐ|マネージャーの実務ステップ

心理的安全性は、号令やスローガンでは育ちません。
マネージャーの日々の振る舞いの積み重ねで形づくられます。明日から取り組める順に整理します。

ステップ1:上司が「弱さ」と「無知」を先に開示する

「自分も分からないことがある」「この前は判断を誤った」と上司が先に率直に認めると、部下は「ここでは弱さを見せても大丈夫だ」と学びます。
完璧な上司を演じることは、かえって部下の口を閉ざさせると心得ましょう。

ステップ2:発言や質問に「ポジティブに反応する」

部下が意見や懸念を口にしたとき、最初の反応が否定や無視だと、その人は二度と発言しなくなります。
たとえ的外れでも、まず「言ってくれてありがとう」と受け止める。この一手間が、安心して話せる空気をつくります。

ステップ3:1on1で「個別の困りごと」を早期に拾う

全体会議では本音は出ません。
定期的な1on1で一対一の対話の場を持ち、退職の予兆になる小さな違和感を、表面化する前に拾うことが効きます。

ステップ4:フィードバックを「人格でなく行動」に向ける

叱るべき場面でも、人格を否定すれば心理的安全性は一瞬で崩れます。
事実と行動に焦点を当て、改善の道筋を一緒に描く伝え方が必要です。

心理的安全性を「個別最適」で設計する|一人ひとりの不安に合わせる

ここまでの施策は有効ですが、一律のやり方には限界があります。
なぜなら、「4つの不安」のどれが強く出るかは、一人ひとり異なるからです。

慎重で内省的な人は「無能だと思われる不安」を抱えやすく、率直な人は「ネガティブだと思われる不安」が壁になりがちです。
同じ声かけでも、響く人と逆効果になる人がいます。

エドモンドソンの7つの質問の最後の項目——「自分のスキルや才能が尊重され、活かされていると感じるか」——が示すように、心理的安全性はその人の強みや特性が理解され、活かされているという実感と深く結びついています。

だからこそ、メンバー一人ひとりの特性を把握したうえで、その人に合った関わり方を選ぶことが、心理的安全性を本当に高める近道になります。

CIY®才能カルテは、適性検査をもとに社員一人ひとりの強みや関わり方の傾向をレポート化し、「この人にはどう声をかけ、どう任せれば安心して力を発揮できるか」を可視化します。

マネージャーの経験や勘に頼っていた個別対応を、再現性のある仕組みに変えることで、心理的安全性の高い職場づくりと離職予防を支援します。

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まとめ

心理的安全性と離職率の関係を整理してきました。要点は3つです。

第一に、心理的安全性とは「対人リスクを取っても安全だと信じられる状態」であり、ぬるい職場とは異なります。

第二に、Googleの「プロジェクト・アリストテレス」が示したとおり、心理的安全性の高いチームは離職率が低く、成果も高い傾向があります。

第三に、それを高める鍵は、上司の率直な自己開示と、一人ひとりの不安に合わせた個別の関わりにあります。

まずは7つの質問で自社の状態を測り、1on1で個別の困りごとを拾うところから始めてみましょう。
社員一人ひとりの特性を踏まえた関わりを仕組み化したい場合は、適性データの活用が次の一歩になります。

CIY®才能カルテで実践する

心理的安全性は、一人ひとりの特性を理解した関わりから生まれます。
CIY®才能カルテは社員の強みと関わり方のヒントをAIがレポート化し、マネージャーの個別対応を仕組みに変えます。

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よくある質問

Q. 心理的安全性とは何ですか?
A. 「このチームでは対人関係上のリスクを取っても安全だ」とメンバーが信じられる状態を指します。質問・ミスの報告・異論の表明をしても罰せられない安心感のことです。仲良しの「ぬるい職場」とは異なり、率直に意見をぶつけ合えるからこそ高い基準で成果を追える状態を意味します。
Q. 心理的安全性が低いとなぜ離職率が上がるのですか?
A. 安心して発言できない職場では、困りごとや不満が表面化せず水面下で蓄積し、上司が予兆を察知できないまま突然の退職に至るためです。さらに意見が言えない状態は「貢献できていない」という無力感を生み、エンゲージメント低下を経て転職へと向かわせます。
Q. Googleの「プロジェクト・アリストテレス」では何が分かったのですか?
A. チームの成果を最も左右する要因が「心理的安全性」だと結論づけられました。約4年・180チームの分析で、心理的安全性の高いチームは離職率が低く、収益性が高く、マネージャーから高く評価される傾向が示されています。
Q. 自社の心理的安全性はどう測ればよいですか?
A. エドモンドソンの7つの質問を5段階で社員に問い、スコア化するのが基本です。「ミスをすると非難されるか」「助けを求めやすいか」「自分の才能が活かされていると感じるか」などを定期的に測定し、感覚ではなく数値で状態を可視化します。パルスサーベイと組み合わせると変化を追えます。
Q. 心理的安全性を高めるために、マネージャーは何から始めればよいですか?
A. まず上司自身が「分からない」「判断を誤った」と率直に開示することから始めます。次に部下の発言にポジティブに反応し、1on1で個別の困りごとを早期に拾い、フィードバックは人格でなく行動に向けます。一人ひとりの不安の出方は異なるため、特性に合わせた関わりが効果的です。