優秀な営業マンを課長にしてはいけない?「名選手、名監督にあらず」の真実と、組織崩壊を防ぐ「適性」の見極め方

「今の営業エースである彼を課長に昇進させれば、部署の数字はもっと伸びるはずだ」。 そう信じて辞令を出した半年後、あなたの会社で起きているのは「期待通りの成長」でしょうか? それとも、「エースの疲弊」と「部下の離職」でしょうか?
実は、多くの社長や人事責任者が、良かれと思って行った昇進人事で頭を抱えています。 期待していた新任課長は、プレイング業務と管理業務の板挟みになり、数字は低迷。さらに悪いことに、今まで定着していた若手社員たちが次々と辞表を出していく……。
これは、御社だけで起きていることではありません。「名選手、名監督にあらず」。この古くからの格言は、現代のビジネス心理学においても、恐ろしいほど正確な真実として証明されています。
本記事では、なぜ「仕事ができる人」ほどマネジメントで躓いてしまうのか、その心理学的メカニズムを解説します。そして、組織崩壊を防ぎ、本当に強い組織を作るために不可欠な「見えない資質」の見極め方について、最新データと共に紐解いていきます。
目次
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図解(記事内容まとめ)
なぜ「名選手」は「名監督」になれないのか? 〜ピーターの法則〜
組織を蝕む「ピーターの法則」とは
まず、経営者であれば必ず知っておくべき、ある有名な法則をご紹介します。アメリカの教育学者ローレンス・J・ピーターが提唱した「ピーターの法則」です。
【ピーターの法則】 能力主義の階層社会において、人間は「無能になるレベル」まで昇進し続ける。その結果、あらゆる役職は、職責を果たせない無能な人間によって占められることになる。
少しショッキングな言葉ですが、論理は明快です。 例えば、現場で優秀な営業成績(レベル1の能力)を上げた社員は、ご褒美として係長(レベル2)に昇進します。そこでも成果を出せば、次は課長(レベル3)へ。しかし、もしその社員に課長としての適性がなければどうなるでしょう?
彼は課長の地位で成果を出せなくなり、そこで昇進が止まります。降格人事を行わない限り、彼は「自分にとって無能なレベル(課長)」の地位に留まり続けます。 こうして組織全体が、「かつては優秀だったが、今の役職には向いていない人たち」で埋め尽くされていくのです。
「プレイヤー」と「マネージャー」は全く別の競技
なぜこのような現象が起きるのでしょうか? 最大の原因は、現場で成果を出す能力(プレイヤー能力)と、人を動かす能力(マネジメント能力)の「非連続性」にあります。
多くの企業では、マネージャー職を「プレイヤーの延長線上」にあるキャリアとして位置づけています。しかし、求められる資質は正反対と言っても過言ではありません。
- プレイヤー:
自分のスキルを高め、自分の手足を使って、自分自身を律して成果を出す(自律性)。 - マネージャー:
他者のスキルを見極め、言葉と環境を使って、他者を通じて成果を出す(他律性・支援力)。
サッカーの名ストライカーが、必ずしも優れた戦術眼や指導力を持っているわけではないのと同じです。
「トップ営業マンを課長にする」という判断は、実は「バスケが得意な選手を、背が高いからという理由だけでバレーボールの試合に出す」ような、種目違いの無謀な抜擢人事である可能性が高いのです。
データで見る「上司の適性不足」が招く代償
マネジメント適性のない人材を管理職に据えることは、単に「その部署の成果が出ない」だけでは済みません。より深刻なダメージは、「優秀な部下の離職」という形で現れます。
退職理由の「本音」No.1は常に人間関係
社員が退職を申し出る際、本当の理由を口にすることは稀です。 エン・ジャパンが実施した「退職理由のホンネとタテマエ」に関する調査(2024年版など)によると、会社に伝える退職理由(タテマエ)のトップは「キャリアアップ」や「家庭の事情」ですが、本当の理由(ホンネ)の第1位は、圧倒的に「人間関係」です。
中でも、「上司との相性が悪い」「上司の指示に納得がいかない」といった、直属の上司に対する不満が離職の決定打になっているケースが大半を占めます。
エース級の離職=数百万円のキャッシュアウト
「部下が辞めても、また採用すればいい」と考えるのは危険です。採用難易度が極まっている現在、そのコストは経営を圧迫します。
マイナビ等の調査(2024年実績)によると、中途採用にかかる1人あたりの平均コストは約60〜80万円と言われています。しかし、これはあくまで求人広告費などを人数で割った平均値です。 即戦力となる優秀な人材を人材紹介会社(エージェント)経由で採用する場合、そのコストは年収の30〜35%が相場です。
- 年収500万円の社員が1人辞め、エージェントで補充する場合:約175万円の採用コスト
- さらに、入社後の教育コストや、戦力化するまでの期間の機会損失を含めると、損失額は年収の100%〜200%に達するとも試算されます。
たった1人の「適性のない管理職」が、その下にいる3人の優秀な部下を潰せば、会社は1,000万円近い見えない損失を被ることになるのです。
トップ営業マンが陥る「プレイヤー気質」の罠
では具体的に、優秀なプレイヤーほど陥りやすいマネジメントの失敗パターンを見ていきましょう。
Googleが証明した「専門スキル」の優先順位の低さ
「上司は部下よりも業務知識が豊富でなければならない」と思っていませんか? Googleが社内の優秀なマネージャーの条件を特定するために行った有名な調査プロジェクト「Project Oxygen(プロジェクト・オキシジェン)」では、衝撃的な事実が明らかになりました。
優秀なマネージャーに求められる要件のランキングにおいて、「専門的な知識・スキル」は下位(当初は最下位)だったのです。 代わりに上位を占めたのは、以下のスキルでした。
- 良いコーチであること
- チームに権限を委譲し、マイクロマネジメントをしないこと
- 部下の成功と幸福に関心を持つこと(心理的安全性)
「自分でやった方が早い病」の弊害
トッププレイヤーだった新任課長が最も陥りやすいのが、「自分でやった方が早い病」です。 彼らは自身の成功体験に基づき、「なぜこんなこともできないんだ?」と部下に苛立ちを感じます。そして、部下が育つまで待つことができず、自分で仕事を取り上げてしまいます。
その結果、以下のような悪循環が生まれます。
- 課長のパンク:
プレイング業務を抱え込み、マネジメント(戦略立案や部下育成)をする時間がなくなる。 - 部下のしらけ:
「どうせ課長がやるんでしょ」と自律性を失い、成長機会を奪われたと感じてモチベーションが下がる。 - チームの弱体化:
特定の個人(課長)に依存した組織になり、課長が倒れたら崩壊する脆弱なチームになる。
これは個人の能力不足というよりは、「達成意欲が高く、競争心が強い」という、プレイヤーとして優秀だった資質そのものが、マネージャーとしては裏目に出ている状態なのです。
あなたの部下はどのタイプ? マネジメントにも「型」がある
「じゃあ、営業成績が良い人間は管理職にしてはいけないのか?」というと、極端な話ではありません。重要なのは、その人の「資質(Personality)」が、どのスタイルのリーダーシップに向いているかを見極めることです。
リーダーシップの2つの型
大きく分けて、リーダーには2つのタイプがあります。
1. 支配型(牽引型)リーダー
- 特徴: 「俺についてこい」タイプ。強い意志とカリスマ性で組織を引っ張る。
- 適性: 競争心が強く、自己主張ができる資質。
- リスク: 自分のコピーを作ろうとしがち。イエスマンしか残らず、組織が硬直化しやすい。
2. 支援型(サーバント型)リーダー
- 特徴: 部下の話を聞き、障害を取り除き、環境を整える「縁の下の力持ち」タイプ。
- 適性: 受容性が高く、協調性や他者への配慮ができる資質。
- メリット: Googleが推奨するように、今の時代に求められるのはこちらのタイプ。部下の自走を促し、持続可能な強いチームを作る。
氷山モデルで見る「見えない資質」
履歴書や職務経歴書で見えるのは、氷山の一角である「スキル」や「知識」「実績」だけです。 しかし、マネジメントの向き不向きを決定づけるのは、水面下にある「性格」「価値観」「動機」といった見えない資質です。
多くの企業は、水面上の「数字(実績)」だけで昇進を決めてしまいます。しかし、水面下の「資質(受容性や支援力)」を見なければ、その人が「部下を潰す上司」になるか「部下を活かす上司」になるかは予測できないのです。
成功するリーダーを見抜く「客観的視点」の重要性
これまでの内容で、「見えない資質」の重要性はご理解いただけたかと思います。 しかし、ここで新たな問題が浮上します。「人の性格や価値観なんて、どうやって見抜けばいいのか?」という問題です。
「面接」と「勘」の限界
残念ながら、面接や普段の会話だけでこれを見抜くのは至難の業です。 人間には「ハロー効果」という心理的バイアスがあります。これは、「営業成績が良い」「声が大きくて自信がありそう」といった目立つ特徴に引きずられて、その他の能力(マネジメント適性など)まで高く評価してしまう現象です。
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「面接官が陥る心理バイアス(ハロー効果)と、それを防ぐ唯一の方法」
社長や役員の「長年の勘」は大切ですが、こと「今までと違う役割(マネジメント)」への適性を判断する場合、過去の「プレイヤーとしての印象」がノイズになり、判断を誤らせることが多いのです。
だからこそ、昇進・配置転換といった重要な人事決定には、「主観」を排除した「客観的なデータ」が必要不可欠になります。
組織を強くする適性検査「CIY」の活用法
ここで活用したいのが、適性検査による「資質の可視化」です。 CIY®適性検査は、大企業のような複雑で高価なシステムではなく、中小企業が現場ですぐに使える実用的な適性検査ツールを提供しています。
CIY®を活用することで、御社の組織作りは次のように変わります。
1. 「誰を次のリーダーにすべきか」の客観的な判断材料になる
CIY®の適性検査を受検するだけで、その社員が「自分で成果を出したいタイプ」なのか、それとも「他者の支援に喜びを感じるタイプ」なのかが数値で明らかになります。
「あいつは成績が良いから課長だ」という短絡的な人事ではなく、 「彼はプレイヤーとしての資質が突出しているから、専門職として給与を上げよう」 「彼女は数字は中堅だが、支援力と受容性が高いから、チームをまとめるマネージャーに抜擢しよう」 といった、個人の特性を活かした「適材適所」の配置が可能になります。
2. 「成果を出すリーダー」の共通項が一目瞭然になる(ハイパフォーマー分析)
CIY®の最大の特徴は、既存社員の分析にあります。 例えば、社内で「部下の育成が上手いリーダー」と「組織を疲弊させているリーダー」の両方に受検してもらいます。その結果を比較すると、「御社で活躍するリーダー」に共通する資質パターン(ハイパフォーマーモデル)が浮き彫りになります。
- 「うちの良い課長は、意外と『協調性』が高い人が多いな」
- 「逆に『自己主張』が強すぎる人は、うちの社風ではマネージャーに向かないのかもしれない」
このように、感覚ではなくデータとして「成功モデル」を定義できれば、次の課長候補を選ぶ際も、そのモデルに近い資質を持つ人材を選ぶだけで、ミスマッチのリスクを劇的に減らすことができるのです。
「勘と経験」の抜擢人事から卒業しよう
トップ営業マンを安易に管理職にして、エースも部下も失う。そんな「誰も幸せにならない人事」は、もう終わりにしましょう。
社員一人ひとりには、必ず輝ける場所があります。 「名選手」には名選手の、「名監督」には名監督の、それぞれ異なる「適性」があるだけなのです。 経営者の役割は、彼らを無理やり枠にはめることではなく、彼らの持っている「資質の形」を知り、それがパチリとハマる場所を用意してあげることです。
まずは「今の組織の状態」を知ることから
「うちの今の課長たちは、本当はどちらのタイプなんだろう?」 「次の昇進候補者、本当にマネージャーにして大丈夫かな?」
そう思われたなら、まずはCIY®で「組織のレントゲン」を撮ってみませんか?
CIY®では無料トライアルを実施しており、自社の社員や候補者の適性をすぐに分析することができます。
まずは管理者である皆様自身が受検して、その精度の高さを体験してください。 「なぜ自分が今の仕事にやりがいを感じるのか(あるいはストレスを感じるのか)」、その答えが驚くほど明確になるはずです。








