更新:2022.08.26|公開:2021.05.12
ピープルアナリティクスとは?活用方法と成功事例についても徹底解説
ピープルアナリティクスとは、人材データを利用して問題点や課題を可視化し、その問題解決を目指すための手法の事を指します。
AIやビッグデータなど膨大なデータなどが蓄積されるようになった事で、人事に関するデータを集め、分析し問題点を可視化できるピープルアナリティクスが注目されています。
目次
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この記事のポイント
「ピープルアナリティクス(People Analytics)」という言葉をご存じですか?
ピープルアナリティクスとは、最新の技術を用いて従業員の人材データを収集・分析し、企業や組織の問題解決を目指すための手法です。
組織として活動すると、様々な問題や課題があるものです。しかし、それらを具体的に可視化したり、その問題点を解決するための明確な道筋を作るのはこれまでは簡単ではありませんでした。
ピープルアナリティクスは従業員の行動や特性など膨大なデータを集め、それらを分析する事で課題や問題点を明確化します。また、これまで推測でしか対応できず、明確な改善策を見出せなかったテーマにおいても、データに基づいた客観的根拠のある問題解決への具体的なアクションを導きだせることが出来ます。
ピープルアナリティクスは、具体的には以下のような分野でその威力を発揮します。
ピープルアナリティクスが効果的に活用できる分野
- 人材採用
- 配属先決定・教育
- タレントマネジメント
- 人事評価・分析
- 従業員の退職を抑制
- ウェルビーイングへの取り組み
- 現場への理解を深める
とはいえ、これを見ただけでは、一体ピープルアナリティクスがどのように有効活用できるかは分かりませんよね。
この記事では、そんなピープルアナリティクスについて詳しく解説しています。具体的には、この記事をお読みいただくことで以下のような事を理解できます。
本記事のポイント
- ピープルアナリティクスが注目されるようになった背景
- 導入する場合の企業側のメリットと従業員側のメリット
- ピープルアナリティクスの活用シーン
- ピープルアナリティクスの活用事例
- ピープルアナリティクスの活用の注意点
- ピープルアナリティクスを導入するのにおすすめの会社
- ピープルアナリティクスの実践方法
ぜひこの記事をお読みいただき、会社の人事に役立てて頂ければと思います。
1. ピープルアナリティクスとは?
まずは、ピープルアナリティクスの基本情報として、以下の情報を解説します。
- ピープルアナリティクスとは何か基本を解説
- ピープルアナリティクスが注目されるようになった背景
- ピープルアナリティクスの企業側のメリット
- ピープルアナリティクスの従業員側のメリット
それでは一つ一つ解説していきます。
1-1. ピープルアナリティクスとはデータを利用して問題解決を目指す手法
冒頭でも解説した通り、ピープルアナリティクスとは、人材データを利用して問題点や課題を可視化し、その問題解決を目指すための手法の事を指します。
これまでは企業内の問題点や課題などが出た場合、解決するための明確な指針などがなく、勘や個人の経験、または感覚で施策を打つしか手段がありませんでした。
例えば人材採用の決定の際には、人事部が明確な根拠を用いずに応募者の印象を見て感覚で意思決定をする、といったことは少なくありませんでした。また、教育の場面などにおいても明確なデータを用いずに作られたマニュアルなどが利用され、効果に関して疑問があるなどという場面も多くありました。
昨今では、AIやビッグデータなど膨大なデータなどが蓄積されるようになった事で、それらのデータを集め、分析し問題点を可視化できる様になったのです。このような人事の分野におけるデータ活用手法の事を、ピープルアナリティクスと言います。
1-2. ピープルアナリティクスが注目されるようになった背景
ピープルアナリティクスはもともと、主にアメリカを中心に注目され始めた技術です。
2006年頃、Googleでピープルアナリティクスの元となる手法の整備が始められました。2009年頃に同社で「Project Oxygen」という取り組みがなされ、それがピープルアナリティクスの先駆けと言われています。
そのころGoogleが始めたのは、研究チームを結成し優れたマネージャーの要件を研究する事でした。客観的なデータを用いて研究した結果、Googleは「評価の高いマネジャーに当てはまる10つの行動規範」を導きだしたのです。Googleのこうした研究や実践があり、現在では全世界的にデータを用いた意思決定が重要視されるようになりました。
また、近年では働き方の多様化が進んでいることも注目される要因の一つと言えます。性別や人種、年齢や個人個人の環境によって、様々な働き方を認められる時代になったことで、これまでのような経験や知見をもとにした体制では管理しきれなくなる場面も増えました。
ピープルアナリティクスを用いると、そのような状況でも客観性や効率性をもって対応できる事となったのです。
もともとアメリカを中心に発展したピープルアナリティクスは、こうした背景によって現在では世界規模の広がりを見せているのです。
1-3. 企業側のメリット
ピープルアナリティクスを利用する企業側のメリットは、主に以下の通りです。
- 客観的で正確な意思決定が出来る
- 問題点を明確化・共有できる
- 作業を効率化できる
それぞれ、解説していきます。
1-3-1. 客観的で正確な意思決定が出来る
ピープルアナリティクスは個人の経験や勘などを元にせず、データを元にして意思決定を行う手段です。個人の主観や感情を入れることなく客観性の高い意思決定が可能となります。
例えば、ある企業では入社3年以内の離職率が高かったとします。ピープルアナリティクスのない時代には、その理由を突き止めるためには会議などで個々の意見をまとめて改善を目指す事しかできませんでした。
この方法だと個人の経験や勘などをもとに判断せざるを得ないため、客観的な問題解決策を提示することは簡単ではありません。
ピープルアナリティクスを用いると、データに基づいた客観的な視点で意思決定ができる為、より正確で効果的な施策を打つことができるのです。
1-3-2. 問題点を明確化・共有できる
ピープルアナリティクスを活用すると、問題点を明確化できるのも大きなメリットです。
先ほどの離職率の例を出してみましょう。データ分析を行う事で、過去に離職してしまった人と定着した人のデータ分析などによりその傾向が浮き彫りになります。
これまでは経験や勘などに頼って離職率が上がった原因を推測することしかできませんでしたが、ピープルアナリティクスを用いる事で事実を明確化できるのです。
それらの結果やそれに基づいた解決策をスタッフ内で共有できることも、大きなメリットです。データ分析を用いると意思決定の基準や問題点、その解決策も客観的なものとなるため、情報の共有において納得感が生まれやすくなります。
また、ピープルアナリティクスを活用する事で導入時には気付いていなかった問題点に気づくことができるというメリットもあります。集めたデータを分析する事で新しい発見や問題点が生まれ、それを解決するためのアクションを起こしやすくなるのです。
1-3-3. 作業を効率化できる
ピープルアナリティクスを活用する事で作業を大幅に効率化できます。
ピープルアナリティクスはデータを用いて意思決定を行う手段のため、一度システムを作り上げてしまえば客観性の高い意思決定を最短で行う事が出来ます。
それはつまり、これまで意思決定の際に会議などで費やされてきた時間を大幅に短縮できるという事に他なりません。
また、人事異動などで意思決定者が交代した場合などでも、データを用いたピープルアナリティクスの場合は判断基準がぶれないというメリットもあります。これまで、人事異動や退職のたびに新たに組織を組みなおすような手間は必要なくなり、生産性を高める事が出来るのです。
1-4. 従業員側のメリット
では、ピープルアナリティクスを活用すると従業員側にはどのようなメリットがあるのでしょうか。
- 意思決定への理解が深まる
- 上司が変わった場合も意思疎通がスムーズになる
- 人事評価が公平になる
- EX(Employee experience)が向上して働きやすい職場になる。
こちらもそれぞれ解説していきます。
1-4-1. 意思決定への理解が深まる
ピープルアナリティクスを活用して出された意思決定はデータに基づいた根拠があるため、従業員としても理解し納得しやすいのが大きなメリットです。
これまでは、意思決定者(上司など)の決定そのものが勘や経験に基づいた明確な根拠を欠いたものだった事も多く、その場合従業員としても素直に納得するのが難しい事もありました。
しかしピープルアナリティクスを活用した場合、その決定に至った理由は明確です。そのため、従業員側としても納得感をもって業務に取り組めるといったメリットがあるのです。
1-4-2. 上司との意思疎通がスムーズになる
ピープルアナリティクスを活用する場合、上司が異動や退職などで変わった場合にも意思疎通がスムーズになるといったメリットがあります。
上司が変わる場合、これまでは従業員が持っている仕事や能力、特性など様々な面においてお互いに知識がないため関係性を一から構築する必要がありました。しかし、ピープルアナリティクスを用いる事で必要な情報を可視化できるため、意思疎通もスムーズに行えます。
また、上司が変わっても判断基準が変わらないため、人柄や好みによって仕事がし辛くなることなく、これまでと同じように業務に取り組める点も大きなメリットと言えます。
1-4-3. 人事評価が公平になる
ピープルアナリティクスを活用する場合、データに戻づいた人事評価が可能になるため、評価が公平になることが期待できます。
これまでは、上司や意思決定者が人事評価を行う事が常でした。もちろん、人事評価を行う上での基準がないとは言えません。しかし、その基準がデータなどに基づいているのではなく、なんとなくの経験や勘で設定されているものが多かったのは間違いがありません。
ピープルアナリティクスを活用する事で、人事評価の基準が確立し、人事評価が公平になることが期待できるのです。
このため、上司や意思決定者に気に入られれば評価が高くなり、気に入られなければ評価が下がるといった理不尽な人事は減る事となるでしょう。
1-4-4. EX(Employee experience)が向上して働きやすい職場になる。
EX(Employee experience)とは、従業員が働いて得られる経験の事を言います。従業員の満足度を上げ、健康で離職率などを低く保つためにはこのEXの向上が不可欠です。
ピープルアナリティクスを行う事で、このEXが向上し、働きやすい職場になるのです。
ピープルアナリティクスは様々なデータをもとに分析し、問題点や課題を可視化します。そのため、例えば離職率や欠勤率などのデータや健康面のデータなどを分析する事で自社が抱えている問題を可視化できます。
もちろん、アンケートなどを定期的に行う事で従業員の満足度や幸福度も図る事が出来ます。
こういったデータ収集や分析を行い、常に問題点を解決しようと会社全体で動くことで、従業員一人一人も幸福感や満足度を得やすい職場になってゆくのです。
2. ピープルアナリティクスの活用シーン
ここまでは、ピープルアナリティクスがどのような手法なのか、導入のメリットなどを解説してきました。ここからは、具体的にどのようなシーンで活用できるのかを解説していきます。
ピープルアナリティクスを活用できるシーンは以下の通りです。
- 人材採用
- 配属先決定・教育
- タレントマネジメント
- 人事評価・分析
- 従業員の退職を抑制
- ウェルビーイングへの取り組み
- 現場への理解を深める
それぞれについて、解説していきます。
2-1. 人材採用
ピープルアナリティクスは人材採用の場で非常に役立ちます。
これまでは人材採用にはデータに基づいた明確な基準などを設ける事が出来ず、学歴や面接での印象をもとに人材採用を行うしかありませんでした。
面接を重要視した採用プロセスを敷いた場合、面接官の経験や価値観で採用する人を判断せざるを得なくなります。そのため、「面接官に気に入られれば採用される」といった事も少なくありません。
しかし、面接で面接官に気に入られるからと言って、入社後に高いパフォーマンスを見せるかどうかは分かりません。
ピープルアナリティクスを用いる事で、どのような人が入社後に高いパフォーマンスを見せるのかを明確化できます。入社後高いパフォーマンスを見せる社員のデータと応募者の属性などのデータを照らし合わせる事で、採用の際の判断が明確化するのです。
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2-2. 配属先決定・教育
従業員の実績や面談、アンケート結果などのデータを元に分析する事で、個人の能力を把握できます。これにより、個々の適正や能力にマッチした配属先を選べる事となります。
これまでは、一人一人の実績などを手作業で把握したり、面談やアンケートなどで個々の能力や適性を判断する必要がありました。その場合参照にできるデータも限られており、判断基準も明確ではないため、効果的な意思決定は難しかったと言えます。
ピープルアナリティクスを活用するとデータ分析を効率的に行えるため、配属先などの人事に関しても高い客観性をもって意思決定が可能です。明確な基準がある事で従業員側の納得感も得やすいとのメリットがあります。
また、個人の能力や適正を把握するだけでなく、会社全体のデータをもって分析する事で、他者との比較も容易になります。個人の能力や足りない部分も客観的に把握できるため、社員教育の面でも大いに役立つでしょう。
2-3. 人事評価
ピープルアナリティクスは人事評価のステージにおいても大いに役立ちます。
これまで従業員一人一人の人事評価は、上司の判断に頼らざるを得ませんでした。判断基準があいまいなため、実績や面談、アンケートや普段の人柄によって上司の主観で判断される部分も少なく無かったのです。
しかしピープルアナリティクスを活用する事で、客観的なデータをもとにして評価基準を立てる事が出来ます。そのため、評価する側もされる側も納得の上、公正な人事評価が可能となったのです。
2-4. 従業員の退職を抑制
過去の退職者のデータを分析する事で、従業員の退職を抑制できる様になります。
どのような人材がどのような状況下で退職するかなどのデータが明確化されると、それに対しての対応策も事前に立てる事が出来ます。
また、離職率が高い部署の問題解決を行ったり、やむを得ず離職率の高い部署へ配属せざるを得なかった社員へのフォローなども可能です。
ピープルアナリティクスは退職の原因を見出すだけでなく、その解決策も明確化されるため、早い段階での対応が可能となるのです。
2-5. ウェルビーイングへの取り組み
ウェルビーイング(Well-being)とは、従業員が身体的、精神的に、または社会的に健康な状態であることを意味する概念です。近年は働き方改革などにより、従業員が常にウェルビーイングな状態にある事を目指す取り組みが会社全体でなされるようになってきました。
ピープルアナリティクスを用いることで、従業員の状態をより正確に把握する事が可能となります。従業員サーベイ(調査)などで得たデータを元に分析し、従業員一人一人の身体的・精神的なトラブルや問題点にいち早く気付く事で、改善策を取り入れる事ができるのです。
細かなデータを収集する為に、従業員に測定用のウェアラブルデバイスを着用させる方法を取る企業も増えています。
例えばブレスレット型のデバイスを貸与し心拍数や睡眠の質を測ったり、歩数データなどを抽出します。それらのデータを活用する事で、より従業員が健康的な状態で業務に取り組めるように改善策を打ち出せるのです。
ちなみに、ウェアリングデバイスを利用する場合、プライバシーにかかわるデータも扱う可能性があるため、データの取り扱いには細心の注意が必要です。集めたデータの管理や使用については慎重に行わなければなりません。従業員に対しても丁寧に説明し、同意の上で導入が必要です。
2-6. 現場への理解を深める
ピープルアナリティクスを行う事で、現場への理解を深める事が出来ます。客観的なデータを分析する事で、個人や組織の状態を正確に把握できるのです。
特に近年はテレワーク化が進み、以前よりも従業員の状態を把握するのが簡単ではなくなりました。しかし、社内の様々なデータを分析する事でテレワークで業務を行っていても、従業員がどのような状況にあるのかを把握できるようになります。
社員間のコミュニケーションや仕事についての取り組み方を分析する事で、個人だけでなく組織全体がどのように機能しているのかも把握できます。それにより、最大限のパフォーマンスを発揮できるのです。
3. ピープルアナリティクスの活用事例
以上のように、ピープルアナリティクスは様々なシーンにおいて利用価値の高い手段となります。
ここからは、ピープルアナリティクスが具体的にどのように活用されているのかを解説していきます。
3-1. Google
第1章でも解説した通り、ピープルアナリティクスはGoogleによって始められた手法です。ここでは、その中での例を一つ上げてみましょう
Googleはもともと、面接時になぞなぞを問いかけて採用を決める、ユニークな手法を用いている事で有名でした。その有名なお題の一つが、「冷蔵庫にゾウを入れるにはどうすればいいか?」というものです。
Googleは、応募者の思考力や判断力を測るという目的でその様なユニークな手法を採用していました。しかし、その手法は近年では使われなくなったといいます。
それは、ピープルアナリティクスの活用によって、それらのなぞなぞと実際のパフォーマンスには全く因果関係ないことが証明されたためです。これを受けてGoogleはこの手法を全世界的に廃止。より効果的な構造化面接(評価基準や質問項目を決めておき、手順通りに実施する手法)を取り入れるようになったのです。
その他にもGoogleは、採用やマネジメント、離職の防止など、多くの場面でピープルアナリティクスを活用しています。
3-2. 株式会社 日立製作所
日立製作所は日本でのピープルアナリティクス導入の先駆けです。人材ではなく「人財」として捉える日立グループは、早くから人事や採用に問題意識を持ち、様々な人事施策を行ってきました。ここでは、その中の一例を解説していきます。
採用に問題があると感じていた日立は、まずピープルアナリティクスを用いて人財のタイプを4つに分類(ポートフォリオ)しました。そうすることで、実際の内定者のタイプはどれに当てはまるかを調査したのです。その結果、人財のタイプが偏っている事が分かったのです。
そこで、社内のパフォーマンスの高い社員へのインタビューや成果などのデータと、応募者の適正検査などで得られたデータを分析し、バランスの良い人財ポートフォリオを作り上げました。そのうえで必要な人材要件を設定したり、面接官へのトレーニングを行うなど、選考の手順も変更したのです。
以下の表をご覧ください。
左側は2015年の応募者と合格者を4つのタイプに分け、その割合をパーセンテージで表したものです。これによると、2015年は応募者と合格者のタイプにほとんど変わりがなく、偏った選考になっている事が分かります。
右側の表は、ピープルアナリティクスを導入後、2016年と2017年の合格者の分布を表したものです。
ピープルアナリティクスを導入した結果、2015年にはDタイプの人財が65%と偏りがあったのに対し、2017年にはDタイプが減少し、人財タイプのバランスが改善されています。
このほかにも日立製作所は、社内のデータを参考に「金曜日の残業の生産性の低さ」に目を付け、「金曜日ノー残業デー」を実施しました。
このように日立製作所は積極的にピープルアナリティクスを活用する事で、生産性の向上や人財採用、人事に役立てているのです。
3-3. ソフトバンクグループ株式会社
ソフトバンクは経営資源としての人材の重要性を感じていました。タイムリーに個人の状況を把握する必要性を感じ、ピープルアナリティクス導入に踏み切ったのです。
従業員個人の状況をタイムリーに把握するためには、新しい仕組み作りを採用する必要がありました。ソフトバンクは大学と連携して様々なデータを用いて研究を行い、従業員の状態を知るのに必要な13の設問を割り出しました。
現在では、社員に対し月に1回その13問の問いについて従業員に回答させ、上司と部下とのコミュニケーションの向上に役立てています。
また、ソフトバンクは2017年から新卒採用の選考時にAIを導入しています。その結果、それまで人が手作業で行っていたエントリーシートの確認業務の75%もの削減に成功したのです。
ソフトバンクの最大の特徴は、最先端のテクノロジーを用いていることです。それにより、ピープルアナリティクスが業務効率化に役立っていると言えます。
3-4. 株式会社サイバーエージェント
株式会社サイバーエージェントは新卒採用チームを結成し、入社後の社員のパフォーマンスをデータ化。それをもとにピープルアナリティクスに活用しています。
取り組みの具体例としては、独自のアンケートツールによりサーベイ(調査)を実施している点です。
サイバーエージェントは従業員のコンディションを可視化するために、社内でアンケートツールを開発。質問数を絞る事で社員が気軽に参加できるという点も考慮しました。これらサーベイの実施によりデータを収集し、必要な人員を把握するのに役立てています。
また、それらのサーベイを参考にして人事部と社員の面談を行ったり、社内でコミュニケーションに活用するなどの方法も取り入れています。
3-5. 株式会社ディー・エヌ・エー
株式会社ディー・エヌ・エーがピープルアナリティクスを専門チームに設置したのは、2017年の事です。社内で集めたサーベイから得たデータを元に、組織の状態を可視化。ウェアラブルデバイスを使って行動データを収集するなどの新たな取り組みも行っています。
また、ディー・エヌ・エーは社員に向けたアンケートを定期的に行っています。その内容は、月に1度、毎月のやりがいを7段階で評価するアンケートや、半年に一度所属組織の状況を知る目的でのアンケートなどです。
ディー・エヌ・エーはさらに、集めたデータの管理ツールの開発にも力を入れています。それぞれのアンケートで得られたデータに適したツールを開発し、情報を管理しているのです。
4. ピープルアナリティクス活用の注意点
ピープルアナリティクスは効果的に活用する事で、様々なメリットが得られることが分かりました。ただし、ピープルアナリティクスの導入する際に気を付けるべき注意点も存在します。その注意点とは、主に以下の5点です。
- データの取り扱いに注意が必要
- データの整理に客観性が必要
- データ分析にスキルが必要
- 活用できる十分な量のデータが必要
- 目的を具体化する必要がある
それでは、具体的に一つずつ解説していきます。
4-1. データの取り扱いに注意が必要
何度も解説している通り、ピープルアナリティクスは社内のデータを活用する手法です。
用いられるデータの中には大量の個人データが含まれているため、データの取り扱いには細心の注意が必要となります。データの内容によっては個人のプライバシーにかかわってくるものもある為、その活用には十分に配慮しなければなりません。
また、外部コンサルタントなど、第三者にデータを提示する際には個人情報が特定される情報は取り除く必要があります。
ピープルアナリティクスを取り入れる際には、個人情報保護について使用範囲を明確化し、データが乱用されない仕組みを作ることを忘れてはいけません。データの利用の際には従業員に対して十分に説明を行い、同意を得た上ですすめる様にしましょう。
4-2. データの整理が必要
ピープルアナリティクスを効果的にかつ効率的に行うためには、データの整理が不可欠です。ピープルアナリティクスで活用するデータが以下のような状態だと抜け漏れが生じやすく、正確な分析が困難になります。
ピープルアナリティクスで使いづらいデータの状態
- フォーマットがバラバラでまとまっていない
- 時系列順になっていない
- どこにどのようなデータがあるのか分からない
- データが重複している
このような場合には分析が難しい場合もありますので、データはあらかじめ整理しておく必要があります。
また、そもそもデータが客観的であるかどうか判断する事も非常に重要です。
人事のデータは属人的であるため、主観的に入力している事も少なからずあるからです。これを防ぐためには、データを一か所で管理し、データの入力基準などあらかじめ設けて偏りをなるべく排除できる様に工夫しましょう。
4-3. データ分析にはスキルが必要
集めたデータを分析する作業は、誰にでもできるものではありません。分析担当者は目的を把握し、まずデータを集める段階でどの様なデータを活用するのかを決めます。そしてそのデータを活用するために、形式などを設計する必要があるのです。
どのようなデータを集め、活用するのかを決める際には、どうしてもスキルや経験に基づいた判断が必要になるという事も理解する必要があります。
例えば、客観性が高く偏りのないデータを用いて分析すれば、その結果も偏りがなく信憑性が高いものとなります。その一方で、そもそも活用するデータの選別に偏りがある場合、その分析結果も偏ってしまう事もあるのです。
その判断をするためには、スキルや経験のある人材が必要になることを理解しておきましょう。
4-4. 活用できる十分な量のデータが必要
そもそも活用できるデータが少ない場合、信頼に足る結果が出ない事が予想されます。
例えば採用にピープルアナリティクスを活用したい場合。学歴や職歴などしかデータがないと、それらを分析しても正確な傾向などは分からない可能性があります。
まずは、ピープルアナリティクスを行うために必要なデータを集めるところから始める必要があるのです。
5. ピープルアナリティクスを導入するのにおすすめの会社
以上の事を踏まえて、どのような会社であればピープルアナリティクスの導入に向いているのでしょうか?具体的に見てみましょう。
5-1. 分析するデータが十分にある会社
会社が設立してからある程度時間がたっており、従業員が一定数いる会社はデータの蓄積がある事が多いため、ピープルアナリティクスに適していると言えます。
先にも解説した通り、ピープルアナリティクスを実践するためには膨大なデータが必要となります。そのため、活用するべきデータがない企業はピープルアナリティクスの導入はおすすめできません。
比較的新しい会社の場合は活用できる十分なデータがない事も多いため、ピープルアナリティクスを導入することは難しいかもしれません。
5-2. 組織力の強化が重要課題である会社
ピープルアナリティクスは、組織力の強化を目ざす会社こそ取り入れるべきであると言えます。実は、ピープルアナリティクスは、実際に組織力の強化を狙う会社が積極的に取り入れて成果を出してきた一面があります。
リーマンショックなどの影響により、エレクトロニクスや自動車の生産工場がよりコストのかからない海外に置かれるようになりました。それまで下請けを担ってきた国内の中小企業にとっては、組織力の強化が重要課題となったのです。
中小企業は大企業と違い、経営が決定したことはすぐに実行に移す事が可能です。そのため、ピープルアナリティクスの導入は大企業よりも進んでいるという一面があります。
ピープルアナリティクスを導入する事で、これまで水面下にあった人事的な問題点を可視化し、スピーディに解決に向かう事ができます。組織自体の構成を考え直したり、より合理的な人事を重んじて社内の人事に改革を起こそうという会社こそ、導入が必要かもしれません。
6. ピープルアナリティクスの実践方法
ピープルアナリティクスを実践するためには、具体的にどのような手順が必要となるのでしょうか?
ここからは、ピープルアナリティクスの実践方法を詳しく解説していきます。
6-1. 目的を具体化する
ピープルアナリティクスを行う際には、データを集める前にまずは目的を具体化する事が一般的です。
目的が具体的であればあるほど、作業は効率的に行う事が出来ます。逆に、目的が漠然としていると不必要なデータまで集めて分析する事となり、非効率になる場合があります。
とはいえ、必ずしも始めの段階で目的を具体化しなければならないというわけではありません。
膨大なデータを収集・分析する中で様々な新しい課題や事実に直面する事となります。そのプロセスにおいては、より緊急性の高い課題を先に解決する必要ができる事もあるのです。
また、そもそも目的がなくピープルアナリティクスを実践する方法も存在します。まずはデータを集めるところから始め、整理をしていく中で問題点を見出していくという方法です。
いずれの方法においても重要なのは、データを集めている段階で目的を見出し具体化していくという点です。データが先か、目的が先かはそれほど大きな問題ではありません。
6-2. 必要なデータを集める
次に、ピープルアナリティクスに必要なデータを収集していきます。ピープルアナリティクスに必要なデータは以下の通りです。
6-2-1. 人材データ
ピープルアナリティクスを実践する上で、基本となるデータがこの人材データです。人材データに含まれるのは以下の通りです。
人材データに含まれるもの
年齢、性別、所属部署、給与、勤怠情報、職位、スキル、評価、業績、アンケート結果 など
6-2-2. デジタルデータ
ピープルアナリティクスでいうところのデジタルデータとは、勤務時間内で社用パソコンまたは社内電話などの利用データの事を指します。具体的には、以下のようなものの事を言います。
デジタルデータに含まれるもの
パソコン利用時間、インターネットの閲覧履歴、メールの送受信先、電話の通話履歴 など
従業員のコミュニケーション状況を知ったり、それに対してのパフォーマンス状況を分析する目的などで利用します。
6-2-3. オフィスデータ
オフィスデータとは、会社の設備の利用状況を確認するデータです。
オフィスデータに含まれるもの
時間帯や曜日ごとの水道代や電気代など、会社の設備の利用履歴 など
このデータを分析する事で、どの時間帯にどの設備が使われているのかが分かります。それにより、従業員の行動やコミュニケーションについて把握できます。
6-2-4. 行動データ
社員一人一人がどのような行動をとっているのかのデータを行動データと言います。例えば社用携帯のGPSで位置情報を把握したり、カレンダー機能を利用する事で自席にいる時間を測る事が出来ます。また、ウェアラブル端末を用いる事でより詳細なデータを集める事も出来ます。
6-3. 集めたデータを分析する
データを集めたら、いよいよ分析を行っていきます。データを分析するためには、以下の4種類の分析方法があります。
- 記述的分析
- 診断的分析
- 予測的分析
- 処方的分析
6-3-1. 記述的分析
記述的分析は最も基本となる分析方法です。過去に何が起きたのかを明らかにする分析方法の事を指します。過去のデータを集めて要約し、可視化する事で現在の状況を把握したり、対策を練ったりするのです。
例えば人材採用のステージにおいてピープルアナリティクスを活用する場合。入社後高いパフォーマンスを見せる社員の属性などを細かく確認する事で、その傾向や現状を把握します。
6-3-2. 診断的分析
診断的分析は、記述的分析によって把握した現状がなぜ起こったのかを分析します。
先ほどの例では、入社後に高いパフォーマンスを見せる社員の「採用時」のデータを分析する事で、なぜその様な結果になるのかを判断するなどです。
6-3-3. 予測的分析
予測的分析は、これまでに分析した内容によって推測される事象を発見する事です。
入社後に高いパフォーマンスを見せる社員のデータ分析に関しては、同じ傾向の応募者を採用すれば再現できるなどの仮説を立てる事が出来ます。
これらの仮説や起こりうるリスクをより正確に把握するために、近年ではAI(人工知能)が活用される事もあります。
6-3-4. 処方的分析
処方的分析では、これまでの分析で得られた結果をもとにどのような施策をとることがベストかを判断する事です。
例えば人材採用の分野においては、入社後に最大限のパフォーマンスを発揮する人材を割り出し、採用に生かせるといった事です。
6-4. 集めたデータから仮説検証する
データ分析を行っていくと、徐々に課題点が明確化してきます。その課題点は、もともとピープルアナリティクスを行う際に持っていた目的と同じ事もありますが、より緊急性の高い課題が見えてくる事もあります。
いずれにしても、課題点が見えてきたら原因について仮説を立て、実行します。
例えば、特定の部署の離職率が高い事を課題点として設定する場合。様々なデータを検証する事で、なぜその問題が起こるのか仮説を立てる事が出来ます。その部署の離職率が高まり始めた時期に人事などで上司が変わった、などの事があれば上司にヒアリングをしたり、社員とのコミュニケーションの強化やアンケートなどで改善策を探すなどの施策が打てます。
必ずしも最初に立てた仮説が正しいとは限りません。トライ&エラーを繰り返しながら、原因究明や問題解決を目指しましょう。
6-5. 結果を考察する
施策を実行に移したら、それで終わりではありません。実際にはどのような結果になったのか、考察する必要があるのです。
分析は正しく行われたかや検証方法は適切だったのかなど、様々な視点から考察を重ねる事で、より精度の高い施策を打てるのです。
また、同じ問題に対しては一度だけの分析で終わらせない事も重要です。時期をあけながら何度も繰り返し、その都度新しい仮説や課題を定期する事で、分析結果はより精度の高いものとなるでしょう。
7. ピープルアナリティクスをもっと深く理解するためには
ピープルアナリティクスはデータ収集や分析など、幅広い知見やスキルが必要な分野です。ここでは、ピープルアナリティクスを活用する際におすすめしたい書籍を紹介します。
7-1. ピープルアナリティクスを知るためにおすすめの本
ピープルアナリティクスには、データドリブンなどのカテゴリーや、人事戦略など、様々な分野の幅広い知識が必要となります。それぞれを体系的に学ぶのもおすすめではありますが、じっくりと時間をかけられないという方には、やはりピープルアナリティクスの専門の書籍がおすすめです。
7-1-1. ピープルアナリティクスの教科書 組織・人事データの実践的活用法
こちらは、ピープルアナリティクスのセミナーなども行っている一般社団法人ピープルアナリティクス&HRテクノロジー協会がまとめた書籍です。
人事戦略にデータ分析を取り入れるといった内容に関係する本は少なくありません。しかし、実は「ピープルアナリティクス」についてダイレクトに書かれている書籍はそれほど多くはないのです。
「ピープルアナリティクスの教科書」はタイトル通り、データを使った人事戦略であるピープルアナリティクスを詳しく解説した書籍となっているのが特徴です。活用方法や9社の事例を詳しく解説しており、きわめて実践的な書籍と言えるでしょう。
ピープルアナリティクスを知りたい方は、まずは購入すべき書籍です。
7-1-2. ピープルアナリティクスで人事戦略が変わる
こちらもピープルアナリティクスをテーマにした書籍です。
この本では、ピープルアナリティクスをどのように導入する事で効果的に運用ができるのかなどを解説しています。組織の改善に繋がるピープルアナリティクスを理解するための6つのポイント、また、応用のためのフレームワークを解説しています。
これによって、ピープルアナリティクスをどのように活用すべきかのイメージがしやすくなります。ただし、実際の活用事例などがないため、これを読み解くための基礎知識は必要です。
8. データを有効活用して人事に活かそう!
以上、この記事ではピープルアナリティクスとは何か、またその実践方法などを解説してきました。
この記事で分かったこと
- ピープルアナリティクスが注目されるようになった背景
- 導入する場合の企業側のメリットと従業員側のメリット
- ピープルアナリティクスの活用シーン
- ピープルアナリティクスの活用事例
- ピープルアナリティクスの活用の注意点
- ピープルアナリティクスを導入するのにおすすめの会社
- ピープルアナリティクスの実践方法
この記事をお読みいただいた事で、正しくデータを活用し、それを分析する事で人事や採用など様々なシーンで役立てる事が出来ることがお分かりいただけたかと思います。
ピープルアナリティクスは誰にでも気軽に導入できるものではありません。しかし、ピープルアナリティクスを活用したサービスも増えてきています。
企業の「求める人物像」をAIが明確にした上で、候補者と求める人物像のマッチ度を選考に活用できる「CIY®」もその1つです。
8-1-1. ピープルアナリティクスを活用した採用サービスCIY®
採用ツールを利用すると、AI診断などデジタル技術を活用し、データに基づいた客観的で信頼性の高いマッチングが可能になります。
これまで主観や直感による採用で失敗したことのある企業では、一度試して見る価値があるでしょう。CIY®について詳しくは以下のリンクからご確認ください。
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