更新:2022.08.26|公開:2021.05.08

コンピテンシー評価とは?メリットデメリットとやり方を具体例で解説

コンピテンシー評価とは、仕事で良い成果を出し続けている人材に共通して見られる行動特性(=コンピテンシー)を人事評価の対象とする評価制度です。

目次

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この記事のポイント

仕事ができる人特有の行動特性をモデル化して評価項目とするのが特徴で、“その人が有するスキル”や“実際に出した成果”ではなく、「成果に結び付く行動特性」が評価されます。

コンピテンシー評価は、社員のモチベーション向上や強い組織づくりに有益ですが、一方で導入の難しさといったマイナス面もあります。

コンピテンシー評価の導入を検討するのであれば、メリット・デメリットの両方を把握しておくことが欠かせません。

そこで本記事では、これからの人事制度において重要性が増している「コンピテンシー評価」について詳しく解説します。

本記事のポイント

  • コンピテンシー評価の基礎知識が身に付く
  • コンピテンシー評価のメリット・デメリットが理解できる
  • 導入の流れや注意点・成功のポイントまで網羅

「コンピテンシー 評価について知りたい」
「自社にコンピテンシー評価を導入すべきか見極めたい」
…という方におすすめの内容となっています。

この解説を最後までお読みいただければ、あなたは「コンピテンシー評価の基本」はもちろん、良い面・悪い面を多角的に理解できるようになります。

的確な導入判断の一助になると同時に、導入する場合には、失敗を回避して成功させるために必要な知識が身に付くはずです。では、さっそく「コンピテンシー評価」の解説を始めましょう。

1. コンピテンシー評価とは

コンピテンシー評価とは

まずコンピテンシー評価の基礎知識から解説します。

1-1. コンピテンシー評価とは行動特性をもとに行う人事評価のこと

コンピテンシー評価とは、コンピテンシー(=高い業績を上げる人に共通して見られる行動特性)をもとにして行う人事評価のことです。

コンピテンシー評価では、仕事ができる人に共通する行動特性を抽出してモデル化し、そのモデル(コンピテンシーモデル)に沿って、人事評価の項目を定めます。

コンピテンシーの行動特性は、業種・企業・職種・職位などによってさまざまですが、例えば以下のような要素が、コンピテンシー評価の評価項目となります。

▼ コンピテンシー評価の評価項目の例

  • 誠実な対応
  • ルール遵守
  • ストレスコントロール
  • 傾聴する姿勢
  • 緻密な進捗管理

1-2. コンピテンシーとは何か

ここで、コンピテンシー評価を理解するうえで欠かせない「コンピテンシー」について、少し踏み込んで解説しておきましょう。

コンピテンシーは、「学歴や採用試験の結果が似通った人物でも、仕事における実績に差が出るのはなぜか」という疑問を起点とした、ハーバード大学マクレランド教授の研究から生まれた概念です。

研究の結果、学歴や知能は業績にあまり関係がなく、ハイパフォーマー(高業績者)と呼ばれる“継続的に仕事で期待される成果を挙げ続ける仕事のできる人たち”には、共通した行動特性が観察されることがわかりました。

仕事で結果を出す人たちに共通して見られる行動特性を「コンピテンシー」と呼び、コンピテンシーは、人材の採用、評価、育成など、さまざまなシーンで活用されています。

なかでも、特に「人事評価」にコンピテンシーを取り入れるのが、本記事のテーマである「コンピテンシー評価」となります。

「仕事ができる人の行動特性を評価項目として、同じ行動特性を身に付ければ、高い業績を上げられるようになる」という考え方です。

コンピテンシーについてより詳しく知りたい場合は、以下の記事もあわせてご覧ください。

1-3. ほかの評価手法にはないコンピテンシー評価の意義

コンピテンシー評価の意義は「目に見える具体的な行動」を評価対象とするところにあります。

例えば、「傾聴(心を傾けてじっくりと相手の話を聞くこと)」を例にして、ほかの評価手法と比較してみましょう。

1-3-1. 能力評価との違い

コンピテンシー(行動特性)ではなく、能力やスキル(有している技能や技術)を評価対象とする場合、「傾聴力を持っているかどうか」によって評価が決まります。

一方、コンピテンシーを評価対象とする場合は、「傾聴をしているかどうか」で評価が決まります。

  • 能力評価:“傾聴力を持っているか”が評価される
  • コンピテンシー評価:“傾聴をしているか”が評価される

つまり、コンピテンシー評価では、あるスキルを有しているだけでは不十分で、そのスキルを活用して行動しているかが問われます。

コンピテンシー評価は、「従業員の成果につながる行動」を増やす効果があり、結果として企業の業績向上に直結しやすくなります。

1-3-2. 成果評価との違い

次に、成果主義を導入している企業で採用されている成果評価との違いを見てみましょう。

成果評価で評価されるのは「結果」であり、プロセスは評価対象外です。

前述の「傾聴」を例に取れば、傾聴は成果ではありませんので、どんなに素晴らしい傾聴を実践していたとしても、評価にはつながりません。

  • 成果評価:傾聴していても評価されない
  • コンピテンシー評価:“傾聴をしているプロセス”が評価される

近年では、行き過ぎた成果主義はモチベーションの低下や、短期成果の追求・スタンドプレーの助長につながるとして、警鐘を鳴らす専門家も増えています。

一方、「成果につながる行動」を評価対象にするコンピテンシー評価には、プロセスを重視した評価制度でありながら、成果向上にも寄与するという意義があるのです。

2. コンピテンシー評価を導入するメリット

コンピテンシー評価を導入するメリット

コンピテンシー評価を導入すると、どんなメリットがあるのでしょうか。

  1. 社員にとって理解しやすくモチベーション向上効果がある
  2. 業績につながる行動を促進し人材成長を加速できる
  3. 企業理念や行動規範を浸透させ強い組織づくりに役立つ

それぞれ詳しく見てみましょう。

2-1. 社員にとって理解しやすくモチベーション向上効果がある

1つめのメリットは「社員にとって理解しやすくモチベーションを向上させる効果がある」ことです。

コンピテンシー評価では「行動特性」に評価項目を落とし込みます。「どんな行動をすれば評価につながるのか」が具体化されるので、被評価者である社員にとって理解しやすいことは、大きな利点です。

人事評価において「わかりやすい=評価基準が明確である」ことは、重要な意味を持ちます。

というのは、「不透明な評価基準に対する不満」や「会社から何を求められているのか理解できない不安」は、社員のモチベーション低下に直結するからです。

透明性が高く、社員にとって何をすべきか理解しやすいコンピテンシー評価は、社員のやる気を高める効果が期待できます。

2-2. 業績につながる行動を促進し人材成長を加速できる

2つめのメリットは「業績につながる行動を促進し人材成長を加速できる」ことです。

前述のとおりコンピテンシーは、高業績を挙げている人(ハイパフォーマー)に共通する行動特性です。現在はハイパフォーマーではない人も、コンピテンシーを倣って実践することで、ハイパフォーマーへと成長していきます。

コンピテンシー評価は、すべての従業員に業績につながる行動を促す仕組みとしても機能するため、人材成長の加速が期待できます。

従来の成果評価や能力評価では伸び悩んでいた人材が、コンピテンシー評価の導入後にハイパフォーマーへと急成長するケースも多く、人材育成に効果を発揮するのがコンピテンシー評価の強みです。

2-3. 企業理念や行動規範を浸透させ強い組織づくりに役立つ

3つめのメリットは「企業理念や行動規範を浸透させ強い組織づくりに役立つ」ことです。

企業理念や行動規範を掲げてはいても、「本当に組織全体へ浸透しているか」というと、自信のない企業が多いのではないでしょうか。

コンピテンシー評価の評価項目に、経営ビジョンを反映させた行動特性を組み込めば、企業理念や行動規範を深く浸透させることが可能になります。

組織のメンバー全員が向かう方向(ベクトル)がそろえば、組織の求心力が高まり、何倍もの力を発揮できる強いチームが完成します。業績が大幅に向上することは、いうまでもありません。

3. コンピテンシー評価を導入するデメリット

コンピテンシー評価を導入するデメリット

企業に大きなメリットをもたらすコンピテンシー評価ですが、デメリットもあります。

  1. 導入のハードルが高い
  2. 導入後も定期的なメンテナンスが必要になる

それぞれ見てみましょう。

3-1. 導入のハードルが高い

1つめのデメリットは「導入のハードルが高い」ことです。

前述のとおり、コンピテンシー評価には多くのメリットがありますが、それらのメリットが享受できるように機能させるためには、自社におけるコンピテンシーの定義から評価項目・評価基準の策定まで、細かな設計が必要になります。

コンピテンシー評価とは、コンピテンシー評価制度を的確に設計できて初めて機能するものなのです。

例えば成果評価ならば、数値などで目標を設定しやすいのですが、コンピテンシー評価では、社内のハイパフォーマー(高業績者)の行動を分析して、コンピテンシーが何なのか調査するところから始まります。

人事制度に関する専門知識に加えて、コンピテンシー評価制度の策定自体に労力がかかるため、一定の人的リソースを確保しないと導入できない点は、コンピテンシー評価のデメリットです。

社内のリソースでは対応できず、人事コンサル会社にアウトソーシングする企業も多い状況となっています。

3-2. 導入後も定期的なメンテナンスが必要になる

2つめのデメリットは「導入後も定期的なメンテナンスが必要になる」ことです。

コンピテンシー評価は、導入時のハードルが高いだけでなく、導入した後もメンテナンスが必要というマイナス面を抱えています。

まず、策定したコンピテンシーが正しいのか(高業績をあげるために機能するのか)検証を重ね、より的確なコンピテンシーへと改良しなければなりません。

人事制度としてのコンピテンシー評価の運用についても適宜見直しを行い、成果が上がるように修正する必要があります。

さらに注意しなければならないのが、策定時には的確に機能していたコンピテンシー評価であっても、企業の状況の変化や、市場・社会・時代などの変化に伴って、機能しなくなるケースがあることです。

コンピテンシー評価を導入したら、定期的なメンテナンスも含めて運用していく労力が必要になります。

4. コンピテンシー評価はこんな企業におすすめ

コンピテンシー評価はこんな企業におすすめ

メリットもデメリットもあるコンピテンシー評価ですが、どんな企業におすすめなのでしょうか。ここでは3つのケースをご紹介しましょう。

4-1. 一部の“仕事ができるエース社員”の成功要因を他の社員に波及させたい

1つめは「一部の“仕事ができるエース社員”の成功要因を他の社員に波及させたい」企業です。

例えば、こんな悩みを抱えてはいないでしょうか。

「古参のエース社員が活躍しているものの、なかなか下の世代が育たない」
「ときどき、急成長して高業績を挙げる社員がいるが、何が良かったのかイマイチわからない」

このようなケースで解決策となるのは、できる社員は、なぜできる社員でいられるのか、その成功要因をコンピテンシーとして明らかにして、他の社員が真似できるようにすることです。

さらに評価制度として導入すれば、コンピテンシーを身に付け行動するモチベーションとなり、波及効果が高まります。

結果として、“仕事ができるエース社員”の人数を大幅に増やせるはずです。

4-2. ベースの考え方は成果主義だがプロセスも評価対象に入れたい

2つめは「ベースの考え方は成果主義だがプロセスも評価対象に入れたい」企業です。

例えば、“マーケティングカンパニーや営業会社など、企業としてはあくまでも成果主義の考え方がベースにあるけれども、人事評価では成果だけでなくプロセスも評価対象にしたい”といったケースと相性が良いのが、コンピテンシー評価です。

なぜなら、コンピテンシー評価で評価するのは成果そのものではありませんが、成果に直結する可能性が極めて高い行動特性を評価するため、「コンピテンシー評価が高い人=成果も出す人」という構図が成り立ちやすいからです。

「成果を出した人を評価したい」という企業の考え方との親和性が高い評価制度が、コンピテンシー評価であるといえます。

4-3. 既存の人事制度を生産性向上に直結する制度に見直したい

3つめは「既存の人事制度を生産性向上に直結する制度に見直したい」企業です。

例えば、年功序列制度など昔ながらの人事制度を長く採用していて、生産性の向上を目的として制度を改定したい場合、コンピテンシー評価は有力な選択肢となります。

その理由としては、成果主義に比較すると、コンピテンシー評価は抵抗感を持つ従業員が少なく、受け入れられやすいことが挙げられます。

そのうえで、生産性向上に寄与する効果は高いため、人事制度の見直しが成功しやすい選択肢といえるでしょう。

5. コンピテンシー評価を導入する流れ 3ステップ

コンピテンシー評価を導入する流れ 3ステップ

コンピテンシー評価を導入する流れを3ステップで解説します。

ステップ1:コンピテンシーモデルを作成する

1つめのステップは「コンピテンシーモデルを作成する」です。

コンピテンシーモデルの作成とは、職務や役職ごとに具体的なコンピテンシーを定めて、明確なモデル(模範、手本)を作ることです。

コンピテンシーモデルを作成する基本的な手法は、社内に実在するハイパフォーマー(高業績者)たちの行動観察やインタビューを通して、共通する行動特性は何なのかを分析し、コンピテンシーとして抽出するやり方です。

ハイパフォーマー以外の人(業績が普通の人)には見られないのに、ハイパフォーマーだけに見られる特有の行動特性を探しましょう。

アンケートなどを利用した行動実態調査、高業績者の上司・部門長・高業績者自身へのヒアリング、高業績者同士のディスカッションなどを通して、広く情報収集していきます。

その際には、一般的にどのような項目がコンピテンシーとして抽出されているのか把握したうえで取り組むとスムーズです。

ここでは『コンピテンシー・マネジメントの展開』の著者であるスペンサー,ライル・M.・スペンサー,シグネ・M.(Spencer & Spencer)のコンピテンシーディクショナリーと、実際にある会社で策定されたコンピテンシーモデルの2つを参考情報としてご紹介しましょう。

参考(1)コンピテンシーディクショナリー

まず、コンピテンシー概念の提唱者であるマクレランド教授の源流を汲む研究者Spencer & Spencerによるコンピテンシーディクショナリーを紹介します。

コンピテンシーディクショナリーとは、コンピテンシーモデルに含まれる要素のことで、Spencer & Spencerは「達成・行動、援助・対人支援、インパクト・対人影響力、管理領域、知的領域、個人の効果性」の6領域・20項目を挙げています。

コンピテンシー コンピテンシーの定義
1. 達成・行動 達成思考
秩序・品質・正確性への関心
イニシアチブ
情報収集
2. 援助・対人支援 対人理解
顧客支援志向
3. インパクト・対人影響力 インパクト・彰響カ
組織感覚
関係構築
4. 管理領域 他者育成
指導
チームワークと協力
チームリーダーシップ
5. 知的領域 分析的志向
概念的志向
技術的・専門職的・ 管理的専門性
6. 個人の効果性 自己管理
自信
柔軟性
組織コミットメント

出所: Spencer & Spencer (1993)
参考:井村直恵「日本におけるコンピテンシー─モデリングと運用─」京都マネジメント・レビュー 第7号

自社のコンピテンシーモデルの要素を決める際には、上表を参考にすると良いでしょう。

参考(2)コンピテンシーモデルの具体例

次により具体的な参考情報をご紹介します。

以下は実際にC社の「リーダーシップ・コンピテンシー」として策定されたものです。

コンピテンシー コンピテンシーの定義
勝つ戦略の開発 ・広い視野を持って戦略を計画や目標に明確に結びつける
・競合他社の事業活動や市場動向に関する深い知識を示す
・重要なビジネス・ドライバーを理解する
・財務情報及びその他の企業情報や市場情報を用いて、ビジネスチャンスを極める
結果追求 ・個人の目標および共通の目標を達成することに対して個人としての責任を負う
・しっかりとした計画を前もって立てて、プロジェクトを推進するために行動を起こす
・状況の変化に対応するために行動を修正する
・時間を効率よく管理し、期限や重要確認ポイントに対して業績をチェックする
顧客やクライアントへの焦点化 ・前もって顧客のニーズを予測して、具体的な要求を見極める
・C社の商品・サービスを売り込み、現在のビジネスを拡大する機会を探る
・卓越した価値を確実に提案する
・顧客が満足だと感じる体験や有益だと感じるような体験が出来るようにする
・それによってC社ブランドを強化する
イノベーションと変化の追及 ・問題の根本原因を特定するために、系統的かつ合理的な分析を行う
・現状を打破して、改革を推進する準備が出来ている
・情報に基づいて判断を下す
・創造的なアイデア・解決策を考え出す
・どの場面で従来のアイデアを採用すべきか、新しいアイデアを創出すべきかを心得ている
関係の構築と展開 ・目標を達成するために、チーム内及びチーム間で労力・リソースを調整する
・目標連成のためにチームワークが重要であることを認識する
・チーム以外の人物からアイデア・情報・提案・ノウハウを取り入れる
・チーム内及びチーム間で強力なチーム関係を構築する
効率的なコミュニケーション ・率直かつ自信を持ってコミュニケーションをとる
・了解や同意を得ることによって影響を及ぼし、他者を納得させる
・焦点を明確にして理解を求めるように会話を導く
・率直に話し、後になってではなくその場で意見を言う
・意義を唱える場合, 建設的な結果を生むような方法で行う
・人の話をよく聞き、協力的である
多様な才能の構築 ・権限委譲と能力開発を通じて、目標を達成するよう動機付けられ奨励されるコミットメントの高い職場環境を作る
・多様なリーダーシップ・スキル及びテクニカル・スキルを備えたチームを形成する責任を負う
・働く場所として最適であるというC社の評判を高める
個人の資質としての優秀さ ・誠実に行動する
・活力と耐性を示す
・挫折や障害に直面してもコミットメントを維持して前向きな姿勢を保つ
・困難な状況を正しく把握して前向きであり続ける
・自分自身の長所と短所を理解していて、自己啓発に取り組む
・頼りになり、親近感があり、率直で正直である

出所:C社社内資料
出典:井村直恵「日本におけるコンピテンシー─モデリングと運用─」京都マネジメント・レビュー 第7号

こちらの例を見ると、コンピテンシーモデルとは何なのか、具体的にどんな風に設定すれば良いのか、参考になるのではないでしょうか。

さらにより多くの企業事例を確認したいときには、書籍として販売されているコンピテンシー評価モデル集を確認するのがおすすめです。

なお、社内に実在するハイパフォーマー(高業績者)が存在しておらず、コンピテンシーの分析・抽出ができない場合には、企業にとっての理想をコンピテンシーとして設定する手法があります。

ただし、想像だけで効果的なコンピテンシーを策定するのは極めて難しい現実があります。理想をコンピテンシーモデルとする場合には、人事コンサル会社など外部のサポートを得て進めたほうが良いでしょう。

ステップ2:評価項目・評価基準を設定する

2つめのステップは「評価項目・評価基準を設定する」です。

コンピテンシーモデルが完成したら、職務・役職ごとに、実際に評価対象とする項目や評価の条件を設定していきます。
具体的には、現在運用している人事評価シートにコンピテンシー評価の項目を定め、評価する際の基準を決めていきましょう。

コンピテンシー評価の項目の例

項目 評価点
効率的なコミュニケーション
チームワークの構築
ストレスコントロール

評価点ごとの基準水準を決めておき、公平で明確な評価ができるよう準備します。

基準水準の例

評価点 評価基準
5 期待水準を大幅に上回った
4 期待水準を上回った
3 期待水準を達成した
2 期待水準をほぼ達成した
1 期待水準に届かなかった

なお、現在運用している人事評価シートがなく、「そもそも人事評価制度の導入自体が初めて」という企業は、まず人事評価制度を設計するための知識が必要になります。

人事評価制度の設計については本記事では詳しく触れませんが、書籍やセミナー受講などを通して、学ぶと良いでしょう。

ステップ3:評価期間を定めて運用スタートする

3つめのステップは「評価期間を定めて運用スタートする」です。
評価項目・評価基準が策定できたら、いよいよ運用スタートです。

評価期間を決め、評価者である上司と被評価者である社員との間で面談を行って、評価項目と目指す目標について合意します。

評価期間中、評価者である上司は、部下がコンピテンシーモデルに沿った行動を取っているかチェックを行っていきましょう。

6. コンピテンシー評価を導入するうえでの注意点

コンピテンシー評価を導入するうえでの注意点

前章ではコンピテンシー評価を導入する流れを解説しましたが、実際に導入する際には、注意したいポイントがあります。

  1. 企業理念(MVV)との整合性・一貫性をチェックする
  2. コンピテンシーモデルは検証・改善を重ねていく必要がある
  3. 評価のやり方自体に不公平感が出ないよう配慮する

それぞれ解説します。

6-1. 企業理念(MVV)との整合性・一貫性をチェックする

1つめの注意点は「企業理念(MVV)との整合性・一貫性をチェックする」ことです。

企業の経営方針として定めているMVV(Mission・Vision・Value)などの経営理念とコンピテンシー評価で促進する行動特性は、矛盾なく統一が取れている必要があります。

なぜなら、もし矛盾があればダブルバインド(矛盾したメッセージを受け取った人が混乱して身動きが取れなくなる状態)となり、社員の生産性を著しく損なうリスクがあるからです。

コンピテンシー評価を通して社員に期待する行動と、企業理念としてもともと掲げている方針に整合性があり一貫性が取れているか、慎重に確認しましょう。

6-2. コンピテンシーモデルは検証・改善を重ねていく必要がある

2つめの注意点は「コンピテンシーモデルは検証・改善を重ねていく必要がある」ことです。

3-2. 導入後も定期的なメンテナンスが必要になる」でも触れたとおり、策定したコンピテンシーモデルとそれに紐付く評価項目や評価基準は、一度作ったら作りっぱなしというわけにはいきません。

“本当に効果的な内容になっているか”という視点で検証を重ね、常にアップデートし続ける必要があります。

コンピテンシー評価を導入する際には、検証・改善のプロセスも含めて長期的な計画を立て、運用していきましょう。

6-3. 評価のやり方自体に不公平感が出ないよう配慮する

3つめの注意点は「評価のやり方自体に不公平感が出ないよう配慮する」ことです。

どんなに素晴らしいコンピテンシー評価制度を作ったとしても、評価者(上司)の評価スキル不足や評価のやり方そのものに問題があれば、コンピテンシー評価はうまく機能しません。

評価実行のプロセスに対して不公平感が出ないように、配慮が必要です。

具体的には、上司の立場にある人材に対して評価者として必要なスキルを教育するほか、例えば360度評価の導入も、解決策として有効です。

360度評価…直属の上司だけでなく同僚・部下・他部署の社員など複数の人物が評価者となって多角的に評価する評価手法

自社の状況に合わせて、最適な評価手法を検討しましょう。

7. コンピテンシー評価の導入を成功させるポイント

コンピテンシー評価の導入を成功させるポイント

最後に、コンピテンシー評価の導入を成功させるポイントをご紹介します。

  1. 最初は人事評価制度に結び付けずに運用してみる
  2. 必要に応じて外部サービスや人事コンサル会社の利用を検討する
  3. コンピテンシー評価が高くなる人材の採用にも並行して取り組む

7-1. 最初は人事評価制度に結び付けずに運用してみる

1つめのポイントは「最初は人事評価制度に結び付けずに運用してみる」ことです。

昇格・昇進・昇給と結び付いている人事制度の改定は、慎重に行わなければなりません。十分な熟考なしに安易に人事制度を変更すれば、社員の不安を増大させてしまいます。

そこで、初めてコンピテンシーの概念を活用する企業では、最初は昇格や昇給に関わる人事評価制度と紐付けず、単なる行動方針として運用してみることをおすすめします。

コンピテンシーの概念が社内に浸透し、実際に効果が期待できることを確認してから、人事制度へと反映していくと、大きな失敗は回避できます。

7-2. 必要に応じて外部サービスや人事コンサル会社の利用を検討する

2つめのポイントは「必要に応じて外部サービスや人事コンサル会社の利用を検討する」ことです。

繰り返し述べてきたとおり、コンピテンシー評価導入のネックとなるのは、設計の難しさです。

社内に人事専門の部署がない場合・人的リソースを割くのが難しい場合には、外部サービスや人事コンサル会社にサポートを受けるのがおすすめです。

外部サービスとしては、近年、人事クラウドサービスのなかに、コンピテンシー評価の機能を持つサービスが複数登場しています。適宜、検討してみると良いでしょう。

7-3. コンピテンシー評価が高くなる人材の採用にも並行して取り組む

3つめのポイントは「コンピテンシー評価が高くなる人材の採用にも並行して取り組む」ことです。

コンピテンシー評価を人事評価に取り入れて既存社員にコンピテンシーを浸透させていくのと同時に、新たに入ってくる新入社員も、コンピテンシーの視点から採用活動を行っていくと、効率的に組織力を高めることができます。

具体的には、もともと自社のコンピテンシーを持っている人を中心に採用し、コンピテンシー評価が高くなる人材を集めていきましょう。

コンピテンシーの視点から採用活動を展開するためにおすすめのツールとしてCIY®があります。

CIY®は、自社の求める人物像に近い特性(コンピテンシー)を持つ候補者を探すことのできる採用サービスです。詳しくは以下のリンクからご覧ください。

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8. まとめ

コンピテンシー評価とは、仕事で良い成果を挙げ続ける人に共通して見られる行動特性をもとに行う人事評価のことです。

コンピテンシー評価を導入するメリットは以下のとおりです。

  1. 社員にとって理解しやすくモチベーションを向上効果がある
  2. 業績につながる行動を促進し人材成長を加速できる
  3. 企業理念や行動規範を浸透させ強い組織づくりに役立つ

コンピテンシー評価を導入するデメリットは以下のとおりです。

  1. 導入のハードルが高い
  2. 導入後も定期的なメンテナンスが必要になる

コンピテンシー評価はこんな企業におすすめです。

  1. 一部の“仕事ができるエース社員”の成功要因を他の社員に波及させたい
  2. ベースの考え方は成果主義だがプロセスも評価対象に入れたい
  3. 既存の人事制度を生産性向上に直結する制度に見直したい

コンピテンシー評価を導入する流れを3ステップでご紹介しました。

  • ステップ1:コンピテンシーモデルを作成する
  • ステップ2:評価項目・評価基準を設定する
  • ステップ3:評価期間を定めて運用スタートする

コンピテンシー評価を導入するうえでの注意点は次のとおりです。

  1. 企業理念(MVV)との整合性・一貫性をチェックする
  2. コンピテンシーモデルは検証・改善を重ねていく必要がある
  3. 評価のやり方自体に不公平感が出ないよう配慮する

コンピテンシー評価の導入を成功させるポイントとして以下が挙げられます。

  1. 最初は人事評価制度に結び付けずに運用してみる
  2. 必要に応じて外部サービスや人事コンサル会社の利用を検討する
  3. コンピテンシー評価が高くなる人材の採用にも並行して取り組む

コンピテンシー評価は、導入のハードルは高いものの、組織の生産性向上に寄与する人事評価制度です。自社の状況に合わせて、導入を検討してみましょう。

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執筆・監修者

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